『5年後に強くなってまた此処で会おう!』と言ったはずなのに、僕だけ騙された。
この作品はなろうラジオ大賞参加作品です!
騙されたのは……。
『今のわたし達じゃあ、魔王になんて絶対に勝てない』
勇者に与えられる聖剣に映る彼女は相変わらず美しい。だけど、その聖剣に入った罅のような深い皺を眉間に刻み、ソラは呟く。
『ソラ、それはアタシ達がもっと強くなる必要がある、ということだな?』
レミは身体中包帯だらけにしながらも美しい切れ長の眼は鋭さを増し、折れてしまった槍を睨みつけている。
『レミ、君の考えは僕も分かるけどさ、でも、魔王が……ねえ、ミーファ?』
『ワタシの記憶では、神が魔王の完全復活を予言されたのは、5年と3カ月後です』
僕の傷を暗い表情で治療しながらミーファは、努めて冷静な声でみんなに告げる。
『ギリギリ間に合う。今回の戦いでよくわかったでしょう』
大敗だった。
『ソラの言うとおりだ』
『ええ』
『……そう、だね。わかった』
本当は誰より自分がよく分かっている。足を引っ張っていたのは自分だ。
僕が、弱くて邪魔だったから……。
『強くなって、5年後また集まろう。魔王を倒すために!』
『ええ!』『ああ!』『はい!』
そう言って僕たちはそれぞれのスキルを磨くために、修行の旅に向かった。
修業は過酷だったけど、みんなも同じように頑張っているんだと思えば耐えることが出来た。
だけど。
僕は、騙されていた。
他の3人は、5年後に集まって魔王を倒す気なんてさらさらなかった……。
騙されたんだ!
「ねえねえ! シド! この前ね、魔王にとどめ刺したのはわたしだよ! 褒めて褒めて~!」
「ま、待て! アタシの空間を切り裂く技があってのことなんだぞ! シド!」
「そもそも魔王城へ行くことが出来たのはワタシの魔法のお陰なんです、シド」
5年後集まったらもう倒してたんですけど。
3人で。
しかも、
「わたしが王様に頼んでシドを魔王がいなくなった土地の領主様にしてもらったんだよ! 優しいシドと強いわたしの夫婦でいい街にしようね!」
「アタシ、この5年間で魔物を狩りまくっていっぱい金を稼いだんだ! 金の心配はないぞ! 色々サポートしてくれてありがとう、結婚式は盛大にやろうな!」
「ありとあらゆる魔法を極めたので快適な生活を贈ることが出来ますからね。貴方がワタシ達の心の支えなのですよ、旦那様」
もう色々決まってた。こういうとこよくないよ!
魔王を倒した最強の3人だ……僕が勝てるはずもない。
だったら、
「分かった。じゃあ、心の準備と花婿修行もあるから5年後に」
「「「却下」」」
5分後、僕は3人と結婚しましたとさ。
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