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【完結】悪役令嬢と手を組みます! by引きこもり皇子  作者: ma-no
三章 引きこもり皇子、働く
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072 ハルム王国の侵攻・完


 ハルム王国との戦争も無かったことにしたフィリップは、翌昼にはエステルの待つ城塞都市ルンドに帰ってい……


「あやつ、まだ娼館で女を抱いてるらしいんじゃ」


 いや、ハルム王が呆れてこんなことを言っているところを見ると、昨夜から今まではっちゃけていたらしい。

 城で事情聴取を受けていたヴァルタル将軍は、その愚痴に付き合うためだけに呼び出されているので、ハルム王と喋っている。


「はあ……敵地でよく伸び伸びできるもんですね」

「それなんじゃが……暗殺者か毒を使ったら、あやつを殺せないじゃろうか?」

「やめたほうがいいんじゃないですか? 私には、フィリップ皇子が死ぬ姿が思い浮かびません。仕損じた場合……いや、失敗に終わる可能性が高いので、確実に陛下の命に関わるかと……」

「じゃよな~……早く出て行ってくれんかのう」

「ですね」


 超特大の爆弾を王都に抱えたハルム王は、いつ爆発しないかと不安でいっぱい。ヴァルタルと2人で、フィリップが早く帰ることを祈るのであった。

 ちなみにフィリップは、褐色の肌の女性が気に入ったのか「全員とするまで帰らないぞ~!」とか、金をバラ蒔いてハッスルしていたのであったとさ。





「ん、んん……殿下……」


 フィリップがハルム王国へ向かった2日後の朝、エステルは目覚めてすぐに、フィリップの顔を思い出す。1日会えないだけで少し寂しくなったみたいだ。


「どうせ死にはしないでしょうから、早く帰って来てほしいですわ……ん?」


 そして独り言を呟いたその時、胸に違和感があったので布団を捲った。


「ででででで、殿下!?」


 ベッドの中には、エステルの胸を鷲づかみしている素っ裸のフィリップ。心配していたその人が、こんなところでエロイことをしているので、エステルも虚を突かれて驚いている。

 しかしフィリップはそんな声を聞いても起きる気配がない。なのでエステルは、どことは言わないが「ギュッ」と握って、フィリップから「ホギャッ!?」という声を出させて起こした。


「そ、それはアカン。次からは絶対やめて。お願いします~」


 朝一から命乞いしているようなフィリップ。さすがのエステルも、皇族に土下座をさせているのでやりすぎたと反省している。


「こちらこそ申し訳ありませんわ。男の弱点とは聞いていましたが、そこまで痛いと知らなかったのですわ」

「じゃあ、もうしない?」

「は、い。ですわ」

「何その言い方!? 『ですわ』もそんな使い方したことなかったよね!? ムギュッ」


 エステルがハッキリしない返事をしたものだからフィリップが騒ぎ出したので、胸に挟んで物理的に黙らせた。フィリップが嬉しそうな苦しそうな顔になったら、エステルはすかさず問い(ただ)す。


「いつ戻りましたの? どうしてわたくしの胸を掴みながら寝てましたの??」

「朝方。えっちゃんの胸は……クセかな? 寝てたからわかんないな~」

「では、裸なのは??」

「それはえっちゃんに早く会いたくて、夜通し走り続けたからだよ。服はホコリっぽいから脱いで、体を綺麗にしたところで力尽きたんだったかな? 記憶にないけど、なんとかベッドに潜り込めたんだね」

「そうですか……」


 フィリップから「早く会いたい」と聞けたエステルは頬をポッとしてニヤけたが、フィリップはビクッと体を揺らした。その笑い顔がちょっと怖かったらしい。

 でも、その動きが誤解を生んでしまう。


「殿下の足なら、次の日には戻って来れたのではなくて? まさか、王都で女を侍らせたり買い漁ったりしていませんわよね??」

「してないしてない」

「では、どうしてこんなに遅くなったのですの??」

「いや~。あの王様、けっこう強情なヤツでね~」


 誤解からエステルは疑惑が浮かんだみたいだが、フィリップは完全に当てられているけど表情ひとつ変えない。これは聞かれそうだと思っていたから、娼館ではっちゃけながらも答えを用意していたからだ。


「王族を掻き集めて、拷問するところをハルム王の前で見せたのですか……殿下にもそんな非情な一面があったのですわね」

「してないよ? 演技だけ。てか、今回はシナリオ通りいかなくて大変だったよ~」

「2回目ですものね。それでも密約は交わして来たのですわよね?」

「バッチリ! 褒めて称えてヨシヨシして~」

「プッ……最後のはなんですの。やらせていただきますけど」


 フィリップが頭を前に出すことで、エステルを完全に攻略。エステルはフィリップを腕枕して頭を優しく撫でる。


「そういえば、帰って来たことは誰かに言いましたの?」

「いや、窓から忍び込んだから、誰も知らないと思う」

「では、もう少しこうしていましょうか」

「途中で寝ちゃったらゴメンね。二徹はさすがに(こた)えたよ」

「お疲れ様でしたわ。ん……」


 こうしてハルム王国の侵攻を1人で追い返して完全勝利したのに無かったことにしたフィリップは、王都であんなにやりまくったのにエステルと抱き合ったまま眠りに落ちるのであった……


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