125 説明1 カイサ、オーセ、キャロリーナの場合
フィリップのクーデター成功から2日。フィリップは初日から精力的に働き、夜もエステルと祝勝会と称してニャンニャン大盛り上がり。
翌日もバリバリ働き、夕方になったらフィリップはお城の外れにある自分の屋敷にカイサとオーセを連れて来た。
「カイサ、オーセ……寂しい思いさせてゴメンね」
「プーちゃ~~~ん!!」
「プーく~~~ん!!」
理由は、急にいなくなったことを謝るため。これまでのことを話そうと、エステルから今宵一夜の許可を貰ったのだ。
「あうっ……は、激しい……」
「「だって~。ハァハァ……」」
「負けるか~~~!!」
「「イヤ~~~ン」」
いや、話もせずにやっちゃってるね。会えなかった寂しさを、体で表現していると思われる。
そんな激しいスキンシップは、2時間越えた辺りで全員グロッキー状態だ。
「ハァハァ……飛ばし過ぎた……」
「「ハァハァ……ね?」」
疲れた3人は水を一気に飲んで、一旦ブレイク。フィリップは2人の頭を両腕に乗せたまま質問に答える。
「何から聞いたらいいんだろ……」
「もう何がなんだかわからないよね~?」
「うん……やっぱり一番の謎は、プーちゃんが出て行った理由かな?」
「それは言わなくてもわかるでしょ? 兄貴が奴隷制度を廃止なんてするから、帝国の民を救うためだよ」
「いまならそうだとわかるけど~。プーくん馬鹿じゃな~い?」
「馬鹿なフリしてたの。本当は兄貴ぐらい賢いよ?」
「「うっそだ~」」
2人には馬鹿な姿しか見せていなかったので、なかなか信じてもらえず。太上皇の作ったと言われている計算器もフィリップが作ったと言っても全然だ。
「まぁ賢いことはこれからの僕を見ていたらわかるよ。帝国を大改造するからね。他の質問から片付けようか」
「う~ん……魔法とか?」
「あ、それから行こうか。僕は7歳から氷魔法を使えることに気付いてね~」
フィリップは説明しながら雪を降らしたり氷のオブジェを作り、氷魔法の属性分割方法も披露だ。
「ほら? 熱いでしょ??」
「うん……これで仮病してたんだね……」
「やっぱり仮病だったんだ~」
おかげさまでフィリップの仮病の謎が解けたカイサとオーセであったとさ。
それからもフィリップは質問に答えていたけど、カイサとオーセはさっきのマッサージで疲れたのか同時に眠ってしまった。
フィリップはまだヤリ足りないのでどうしたモノかと考えたら、これはチャンスだからと外に出た。
「キャロちゃ~ん。ただいま~」
「う、うん……怖いから窓から来ないでくれない?」
ここは買いもしないのに行き付けの奴隷館。3階にある自室の窓をフィリップがしつこくノックするから、それなりの修羅場を乗り越えたキャロリーナでも再会の喜びよりも幽霊が現れた感じになってるね。
「とりあえずどっちからしよっか?」
「おかえりなさ~~~い!!」
「わっ!」
このキャロリーナというドエロイ顔と体の美熟女は、フィリップと8歳の頃から体の関係のある人物。所謂ショタコンで、まったく成長しないフィリップにメロメロのオバサンだ。
フィリップは質問から来るかと思ったけど、キャロリーナはショタ成分から摂取。相当溜まっていたのか、フィリップが干からびるまで吸い取っていたよ。
それは冗談。フィリップは大量の水を飲んでから、キャロリーナの質問に答える。
「何から聞いたらいいかわからないのよねぇ~……どこに身を隠していたってところかしらぁ?」
「ダンマーク辺境伯領だよ。あ、そこの娘さんと結婚することになったんだった」
「えっ!?」
女遊びが趣味のフィリップからいきなり結婚という言葉が出たから、キャロリーナも驚愕の表情だ。
「もう、この関係は終わりなのねぇ……」
「ううん。女遊びやめるつもりないもん」
「皇帝になってお嫁さんまで出来るんだからぁ、いい加減やめなさいよぉ~~~」
でも、フィリップが最低なことを言うから説教だ。
「ウチの嫁さん、政略結婚だからいいのいいの。側室も許可してくれたもん」
「側室と女遊びは別じゃなぁい? 怒られても知らないわよぉ?」
「怒った顔も怖かわいいんだよね~。チビルほどなんだ~」
「う、うん……やめる気ねぇな……」
フィリップは嬉しそうにしているので、呆れてそれ以上言えないキャロリーナ。もうこの際、この3年の苦労をまとめて披露。フィリップが大量に残してくれたお金を密かに配り歩いて、なんとか死者だけは食い止めたそうだ。
「もうねぇ。夜の街どころか帝都全ての店が苦境で大変だったのよぉ」
「あっら~。昼なんて兄貴に任せちゃえばいいのに」
「そうは言ってられないでしょ~。陛下が作った店もあるしぃ、薬屋も患者で溢れてたしぃ、男の子がお腹減らしてるしぃ」
「まぁ昼間の人が元気ないと夜の人も生きられないか……ん? 男の子? まさか僕のお金で孤児院とか作ってないよね??」
「作ってないわよぉ~。元奴隷で身寄りのない子供がごはん食べられてぇ、寝泊まりできる家を運営してるだけよぉ」
「それを孤児院と言うのです……」
どうやらキャロリーナ、この苦難を利用して趣味に走っていた模様。男の子に餌付けして、自分に好意を持たせようと……
フィリップ的には自分から犯罪を唆してしまったので、止めるかどうか悩ましい。その顔を見たキャロリーナは「体の関係は陛下だけよぉ~」と必死に言っていたから信じることにした。どちらかというと、何人食ったか聞くのが怖いんだね。
フィリップが青い顔をしているものだから、キャロリーナは焦って話を逸らすが、これまでの経緯を聞いていたら信じられない話ばかり出て来るので、何度も休憩のマッサージを挟んでいた。
「2万人の軍隊の真ん中に単身飛び込んだ?」
「うん。2回。ザコばっかりだったから楽勝だったよ」
「ありえまへんわ~」
こんな話ばかり聞かされるんだもの。フィリップのことをある程度信じることに決めているキャロリーナでも、嘘を言われているのではないかと疑うようになったのであったとさ。
「こ、腰が……ちょっとヤリすぎたか。いつつ」
フィリップはキャロリーナの質問に答えようと急いでやって来たのに、質問よりもマッサージに時間を取られたので、精も根も尽き果てた。
明るくなりつつある帝都の街を、屋根を飛び交い城壁を飛び越え、帰って来ましたフィリップの根城。いつものクセでバルコニーからコソコソ入ると……
「どこに行ってましたのぉぉ~~~??」
「え、えっちゃん……」
怒れるエステルのお出迎え。フィリップはその顔が怖すぎて大声も出せずに震えてる。
「な、なんでここに……」
「2人が陛下がまたいなくなったと泣きながら城に飛び込んで来ましたのよ! 2人の気持ちも考えなさい!!」
どうやら夜遊びがバレたのはカイサとオーセのせい。やっと帰って来たフィリップが何も告げずに出て行ったから、3年前のことを思い出してパニックになったのだ。
「あ……ゴメンね。今度から抜け出す時は言うからね?」
「もうそういう問題じゃないかと……」
「皇后様に謝ったほうがいいんじゃない?」
「ヒッ!?」
2人に謝ったフィリップがエステルを見ると、ドリルヘアーが逆立っていたから超怖い。怒ドリルヘアー天を突くだ。
「ちょっとぉぉお話しましょうかぁぁ~?」
「カイサ! オーセ! 助けて~~~!!」
「「ごゆっくり~」」
こうしてフィリップは皇帝3日目にして、エステルからババチビルほど怒られたのであったとさ。




