プロローグ「挫折」
外は夜中だと言うのに、ここは眩しすぎて熱かった。
スポットライトは僕だけに当たり、観客はシーンとその時を待っている。
ここにいる人全員を感動させなければならない。
震える全身を高ぶらせ、ギターストラップを肩に背負う。腕を通しピックを構える。そしてしっかりと前を向いた。
「――ハーー、ふぅ……」
深呼吸をし、弦を弾き始める。
いつもより弦が固い。
その分、音が建物中に響き渡っていく。
演奏が乗り出していくとギターの感覚が全身に伝わる。体の一部になったかのように、今までない以
上に馴染む。
抱いていた緊張は消え失せ、自分が演奏をしているのだという高揚感が襲ってきた。
このまま流れに乗るべき。これまで抱き続けた渇望を情熱に変え、ギターに注ぐ。
今日で終わらすんだ。終わりのない世界から抜け出して、輝かしい世界へと踏み出すんだ。
一弦一弦に魂を込める。
気が付いたときには演奏は終わっていた。
時間にして約三分。一気に疲労と虚無感が襲ってきた。
ふらつく体を何とか足で支える。
だってまだ観客から何も頂いていない。
無理やり笑みを作って客の方を見る。しかし、
「……あれ?」
拍手、拍手が来ない。
普通演奏後には拍手が起きるはずだ。
なのに……誰も拍手をしてくれない。
中にはクラブから出て行く人もいた。スーツを着た男性だ。
「はー……こりゃ駄目だ」
舞台袖から聞こえてきた声に、反射的に顔を動かしていた。
そこには頭を押さえ、苦い顔をしているクラブの支配人がおり、従業員が宥めている。
「ああ……そうか……。そういうことか」
その日、『本井塁』は理解した。
自分がギタリストには成れないのだと。
夢に邁進し続けた毎日は、無駄だったということを。