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ゆきの手  作者: 葉野亜依
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 そして、今に至る。

 寒空の下、僕たちは公園にいた。

 天気のせいか、時間帯のせいかわからないが、公園には僕たち以外誰もいなかった。

 僕の危惧した通り、女の子の前では元気なふりをしていたゆきだったが、ここに着いた途端泣き出してしまった。

 誰もいないからこれ幸いである。……いや、こうなると思ったからこそ、人がいなさそうな場所に連れてきたのだけれど。


「……さっきはフォローしてくれてありがとう」

「いえいえ」

「……うう、久しぶりにグサッときたわ」

「だろうね」


 ゆきの様子を見れば一目瞭然だ。

 幼い子は素直だからこそ、その言葉は時に残酷なほど心に刺さる。だからこそ、ゆきはこんなにも凹んでいるのだろう。


「昔友だちに手が冷たくて振り払われたこともあったけどね……この年齢になって幼い子にされたら流石にこたえるわ……」

「だろうね」

「でも……でもね!仕方がないじゃない!いろいろと不可抗力だったもの!」

「そうだね」


 目元を赤くさせて、ゆきが叫ぶ。やるせない気持ちであろう彼女に、僕は首肯した。

 そう、ゆきが言う通り、不可抗力だったのだ。

 手を握ってきたのは、ゆきではなく女の子からで。勿論、女の子が悪い訳ではない。そうかと言って、ゆきが悪い訳でもなく――確かに手袋も何もしていなくて、外気に触れていたからより一層冷たくなっていたというのもあるのだろうけど――ゆきの手が冷たいのは、ゆきの意思とは全く無関係だからだ。

 これが普通の冷え性だったら、改善策があるのかもしれない。けれど、ゆきのは冷え性というよりも、もっと根本的なところに要因がある。それこそ不可抗力なものなのだ。


「不可抗力なものは仕方がないよ」


 だって、と僕は言葉を続ける。


「君は、雪女の末裔なんだから」


 僕とゆき以外誰もいない空間に、僕の言葉は白い吐息となって消えた。

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