少女なオレと鎧の魔物④
※この小説は不定期更新です。
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街灯とスマホを頼りにして歩くこと5時間弱、ようやく遠方に中央区のビル群が見えてきた。
東区の半ばあたりまで歩くと、再び痛みが再燃してきたので鎧の姿に変身している。
少女の姿よりもこちらの姿の方が歩幅も大きく、何よりも痛みに強いのである。
だが欠点があるといえば、歩くたびに金属がぶつかり合う音が鳴るのだ。
ガチャガチャやらキーキーやらで騒音が甚だしい。
しかし早く帰るためには、背に腹はかえられないため変身したのだ。
時間も時間であるからか、騒音でこちらを覗く人影も今のところは見ていない。
昼間のこともあるので、今の姿を見られたら面倒くさいのだ。
なので眠たいがこの時間で助かったともいえる。
「午前2時…いつもならおねむの時間だぞ」
一度だけ変身を解除してポケットからスマホを取り出し、時間を確認すると丑三つ時であった。
幽霊が出る時間と言われているが、今の世界だと幽霊などという被害のないものよりも、魔物という実害があるものの方が怖いのだ。
前触れなく突如として発生するくせに一般人の攻撃を無効化し暴虐の限りを尽くす存在。
この化物を怖いと表さずになんと表すのだろうか。少なくとも、今の小学生に聞くと魔物の方が怖いと答えるだろう。
それはさておき、解除したところ膝の痛みがなくなっていたのだ。
先ほどまでは鎧でなければ耐えられなかった痛みも、今ではジャンプができるまでには回復している。
これも魔物になったことによる副作用なのだろうか。もしかすると、魔法少女やヒーローが持っているように何らかな能力をこの体は持っている可能性が出てきた。
一度歩きながら考えをまとめるとしよう。
まず、副作用だった場合。
こちらは魔物については未知の方が多いために、はっきり言って分からない。
今のところはメリットなのだが、こういうものは大抵の場合にデメリットが付属しているのだ。
手痛いしっぺ返しをくらう前にある程度は予想を立てておきたいものだ。
次に能力であった場合。
まず能力というのは一部例外を除いて、ヒーロー・魔法少女が持っている能力のことである。
この例外というのは、『能力を持たないもの』または『能力を複数個保持している』の2例だ。
基本的には1人につき1つ保持しているものであり、能力はその人物の心情や考え・性格から生み出されているとされている。
したがって、昼間の魔法少女は透明の剣を生み出す関係の能力を保持しているとわかる。そして、透明な剣というと…暗殺だろうか、物騒なものだ。
あとは『魔女』や『英雄』と言われる例外達も能力を保持している。
この『魔女』『英雄』とは、魔法少女とヒーローが成長した姿だ。
厳密に言えば魔法少女・ヒーローは、6歳から9歳の時に能力を発現させた少年少女の呼び名である。
したがって特別な存在でもなければ(特別ではあるが)人造人間などではない。
能力を発現させたからと言って人間でなくなるはずもなく、彼女彼らは血も流せば感情もあるのだ。
そして魔法少女・ヒーローは15歳を境に能力を失っていき、18歳までには完全に消失する。
身体能力も同じで、18歳までには平均的なレベルに落ち着く。
だが稀に、その能力を失わないもの達がいるのだ。
それが先ほど言った『魔女』『英雄』の存在であり、今の魔法少女たちの指南役でもある。
他にも要人の護衛の職に就くものもいれば、一般人に戻って会社員として働いているものもいるとされている。
断言ができないのはその情報が魔法省によって公表されることがないからだ。
魔法少女達が殉職する以外にその後が語られることは今までに一度たりともなかった。
だが『魔女』と『英雄』と呼ばれる存在が知られているのには理由がある.
彼ら彼女らが自ら発表したのだ。
現在『魔女』『英雄』として確認されているのは、
元星の魔法少女・スターライト、現在は魔法省開発部門に勤めている。
元巫女の魔法少女・ナギ、現在ではその能力を使って魔物の早期発見に貢献している。
元継承のヒーロー・ランスロット、彼は確か要人の護衛の仕事に就いていたはずだ。
今わかっているのはこの3人だけだ。
発表していない可能性も否定できないが、どれだけ能力が消えない人物が少ないかはわかるだろう。
余談だが、魔法少女とヒーローの死亡率は、ヒーローの方が圧倒的に多い。
数値にして確か3倍くらいだった気がする。理由としては、手に入れた力を過信し、無謀にも格上の存在に挑む男の子が多い方だった気がする。
だからか、魔物と戦っている現場を目撃するのは魔法少女が多く、ヒーローを見るのはレアだ。
かといってヒーローという存在が軽んじられるわけでも、重んじるわけでもない。ではどのような扱いというと。魔法少女と変わらない扱いである。
結局のところ一般人からすると魔物と戦ってくれれば助かるのでそれでいいのだ。
とりあえず、能力などはこんな感じだろうか。余談もあったが結局のところオレの回復力はどちらの可能性もあると言うわけだ。
オレ的には魔法少女の方が助かるのだが、そこまで高望みをしてはいけない。欲は身を滅ぼすらしいからな。
「さて、変人」
ふと思いついたのだが、今まではポケットに入れてから変身していた。これを手に持っている状態でやればスマホはそのままに変身できるのではないかと思い浮かんだのだ。
結果としてはスマホは手に持ったままに変身することができた。
「自宅までは………あと3kmね、なら4時までには帰れるか」
腕を下ろし、軽くストレッチをする。
歩いて4時ならば走ったなら30分よりも早く帰れるからだ。
戦闘やら色々したのでしなくてもいいとは思うのだが、念には念だ。
「待ちなさい、どこに行くつもりですか」
いざ走り出そうとしたタイミングで、聞いたことのある声が後ろから聞こえた。
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