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敵の敵は味方になり得ない①

※この小説は不定期更新です。


ブックマーク・評価・感想ありがとうございます。


 

「もう一回説明するヨ。 そのカラーコンタクトはとびっきりに黒く作っているだけだヨ。輝きを無くすことはできないし、側から見ると瞳孔が異常に大きく感じる人もいれば、角膜が紺色に見える人もいる。 そして少なからず光っているから絶対に暗闇に入ることはダメ、そして目を合わせるのもダメだからね」


 分かっているよ、お前はオレの親か。 そう笑いながらツッコんでみるも、エルフは本当に心配している表情をしているだけで次第に笑いは苦笑いへと変化していく。




 昨日に大泣きしたオレはいつの間にかに寝ていたようで、目を覚ますと既にお昼に差し掛かっていた。


 お風呂に入っていなかったからか、はたまた吐瀉物の所為かで体臭が酷い事になっていたオレは朝にシャワーを浴びに向かったのだ。

 しかし、ここで問題が発生した。


 服も下着もないのである。


 生まれも育ちも日本である天然日本人なオレからすると、裸族になるのは耐えることが出来ないのだ。それもこの体になってからは顕著であり、裸を見られることを異様に恥ずかしがるようになったのだ。

 これに気がついたのは先ほどであり、シャワー上がりの全裸姿をエルフに見られてしまった時に女子の様な悲鳴を上げながら自室まで駆け込んだのである。


 勿論エルフは謝罪しに来たのだが、裸を見られた事によって上気していた顔を見せたくなく、オレは部屋に入れることなくその謝罪をドア越しに受け入れた。そして落ち着いた頃に下着も普段着も一着も持っていなかったのに気がついたのである。


 服は楓のものがあるのでなんとかはなる。しかし、下着を借りるわけにはいけないために急遽買い物に行くことが決まったのだ。


 昨日は妹の服を着るのは…などと考えていたが緊急事態である。背に腹は変えられないので仕方なく、あくまで仕方がなく妹の箪笥を漁った結果、ダボっとした白色のフード付きのパーカーにホットパンツを拝借したのだ。

 楓よりも頭一つ分低いこの体は当然ながら手足も短く、図らずしてパーカーの下には何も着ていないかのような服装になってしまった。

 そして下着を履かずに服を着るのにも抵抗があったために、以前に履いていたボクサータイプのパンツをそれっぽく裁ち鋏でカットして着用している。しかし素人が切ったためか、至る所から糸くずが出ておりこちょばゆく、サイズも合っていないためになんとも言えない違和感がある。


 この服装を見たエルフからは「その白髪にとても似合っているヨ」と頭を撫でながら褒められた。やはりエルフはオレのことを子供だと思っているのではなかろうか。


「うーん、でも似合ってはいるのだけどその格好は暑くないかな?」


 こっちなんかはどう?と、どこからともなく持ってきた服は、腰に当たる部分位大きめなリボンのついた白色のワンピースであった。

 確かに今の体ならば似合うことは似合うのだろう。だが精神的には男のままな訳なのでスカートの類いには抵抗感があり着ようとすら思えないのだ。しかし、外が連日の猛暑で暑いのは事実である。 一瞬迷うもやはり着るという選択肢を手にすることはなかった。


 オレはエルフの服は断って、この服装で買い物に行く事にしたのだった。


 玄関まで歩いて行き、例によってふんふん言いながらジャンプする。5回程度ジャンプした辺りで火照ってきたオレは、後ろに居るだろうエルフに取ってもらおうと考えて振り返る。


 案の定後ろにはエルフが居た。いつも通りニコニコとしている顔からは考えを読み取ることができない。

 だが空気というか雰囲気がいつもと違う。 和やか、のような…言葉に上手くできないがポワポワしている、あたかも孫を見守るお爺ちゃんのような、そんな感じだろうか。


 何だかその雰囲気を感じさせるエルフに取ってもらうのは癪だなと顔を顰め、再び鍵に向き直りジャンプを始める。


 それから鍵を取れたのは4回ほどジャンプした後であった。



 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「……なんでお前もついてくるんだよ」


 胸元を指で掴み、空気を通しながらエルフに問うてみる。

 本来ならば1人でららぽーとまで向かい、そこでちゃっちゃと買い物を終わらせて帰る気でいたのだが、何故だかエルフがついてきていたのだ。

 先程の件もあり、そこはかとなく嫌な予感がするのは気のせいだと信じたい。


「考えてみなヨ、君は確かに大人だったけど今は子供の見た目なんだヨ? そんな子供が万札を数枚財布から取り出しているシーンをさ」


「……確かに驚くな。 けど、お前が着いてきた理由にはなってないぞ」


 確かに10歳ぐらいだろうか、そんな子供が財布から万札を取り出して服を買うなど見たこともない。

 そんなシーンを想像しようにもオレにはできなかった。


「僕がお金を出すんだヨ。 あ、でも僕はそんなにお金持ちってわけじゃないから立て替えるだけだヨ」


「それは当然だ。奢って貰うなんて考えていないし、お前に借りを作るのもお断りだ」


「それなら良かったヨ。 じゃ、ちょっと財布貸してもらえるかな?」


「………それもう立て替えじゃないだろ」


「それもそうだね」


 そう言った後に何故か「ははは」と笑っているエルフ。 こいつの話は何が冗談でどこまでが本音なのかがわからないから苦手だ。

 ずっとニコニコしているから何を考えているかも定かでないし、何が嘘なのかも分からない状況でこいつの癖も見極めることができない。 流石に心音を読み取るなんて二次元的な能力を持っていない。あくまでオレは初心者に毛が生えた程度なのだ。以前にもいったがオレは心理学者ではない、ニートである。 まあ今は何故か魔法少女のような真似事をしているのだが。 ………いやしてないな。うん、オレただのニートだ。


 そんな自分の現状に打ち拉がれていると、唐突に肩を引かれて後ろにに引っ張られる。


「んなっ!」


 そんな声が口から漏れるが、何も抵抗せずに引かれた体は膝が曲がり後頭部を打ち付ける。






 そんなビジョンが見えたはずだが、いくら時間が経っても後頭部を衝撃が襲うことはなかった。

 恐る恐るに目を開くと、視界は白色に染まっており、先程肩を引いたであろう手は背中に回されていることに気が付く。


「何を落ち込んでいるか知らないけど、階段の近くで考え事は危険だヨ?」


 声がした方向に顔を持ち上げると、いつもとは少し違った困った顔のエルフがいた。


 周囲からの視線が集まっているのを肌で感じると、瞬間的に頭に血が上ってくる。

 咄嗟にエルフの脇腹に拳を入れ、急いで階段を駆け降りる。


 背後からは「和むわぁ」やら「てぇてぇ…」と聞こえて、さらに体が熱くなっていくのを感じる。


 なんなんだこの体は! なんで、今、こんな……こんなにっ!!

閲覧ありがとうございます。

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