1話
まだ、主人公を含め、登場人物の名前が出ておりません。申し訳ありませんが、引き続きよろしくお願いします。
気がつくと目の前は真っ白であった。
「知らない天井〜?、え?あれ?違うな」
言ってみたかったセリフであるが、良く良く見るとかなり狭い空間に閉じ込められている様だった。
「なんだここは?」
俺は普通の人間だったはずだけど、どうなったのだろう。
手足を動かそうと試みるも狭すぎて動かせない、試しに反動をつけて左右に動いてみたが、多少揺れただけでビクともしなかった。
何度もこの空間の脱出を試みたが、体力が尽きてしまった。
「今日はこの辺で勘弁してやる」
疲れきった俺は、意識が遠のいていった。
意識が戻っては脱出を試み、意識が遠のくことを繰り返すこと数回迎えたが何も変わらなかった。
意識を取り戻し、今回こそはと意気込み、反動をつけ左右に動かす。
今までと違い揺れが大きくなり世界が動き出した。
「おっ!これは、行けるか」
ゴロゴロゴロゴロゴロ
「アーーーーーーーーーーーー!」
「オェーーーーー!」
感覚的に回転したことはわかったが、気分は最悪である。
今の動きで考えると、え〜と、球体?卵っぽい?
「いやいや、おかしい、ねーよ」
一体、俺はどうなってしまったのだろう?
疑問だけが残った。
---------------------------
時は少し遡る
「おい、本当この辺にあるのか?」
時折頭上を見ながら2人組の男が、森の中を注意深く歩きまわっていた。
この森は小動物や虫が生息しているが、なぜか魔物は生息していない。
魔物と言うのは、魔素がある場所には存在するものであり、この世界には魔素の濃い薄いはあれど全く無いことはありえない。
人々が暮らす村、街にですら魔素は存在するのにである。
「ああ、あるさ。この森に降り立つのを見たことがあるからな」
「今、奴はいない、上手くいけば、一攫千金だぞ、一生働かなくて済む」
楽観的な物言いに
「代償が自らの命じゃ無ければな」
そう答える。
「ここまで来て、怖気付いたのか?」
ヘラヘラ笑いながらこっちを見てきた。
ムッとはするが
「そんなんじゃねーが、気をつけるに越したことはないからな」
顔色一つ変えずに答える。
この森に魔物が生息しない理由だが、『絶対的上位者が存在する』ことである。
普段、奴は生き物を襲わない、襲う理由も意味もないからだ。
誰かを護る必要も無ければ、矮小な存在を支配する必要もなく、魔素を取り込みさえすれば腹を満たす必要も無く、自由気ままに空も飛べ、生きていける。
ただし、例外がある。
それは自らの勢力圏に入り込み、害をなそうとする存在に対しては、その圧倒的な力を持って排除されることである。
辺りを伺い歩き続けていると、楽観的な男がひときわ大きな木を見つけた。
「うん?あれかな」
「どうした、見つけたか?」
「いや、怪しい木を見つけただけだ」
「なるほど、調べてみるか」
辺りを見回し危険が無いことを確認しつつ2人は大きな木に向かうことにした。
「よく見えないな」
たどり着いた、大きな木は、その存在の如く多くの枝葉に包まれていた
「これは、登らないと調べられないな、どうする?」
「こんなこともあろうかと、木登り道具をもってきたさ」
楽観的な男は、道具袋から、革ベルトに鉄製の爪が付いた装備品を取り出した。
「こいつは、両手、両足に取り付けて使うのさ。使うのは初めてだが、装備方法や登り方は聞いてきてる」
そう言いながら、かちゃかちゃと装備をしていく。
「俺の分もあるのか?」
取り出した際には2組みも無いように見えたが、念のため聞いてみた
「ああ、スマン、あるぞ」
そう言いながら、道具袋からもう1組みを取り出して俺に手渡してきた。
「装備方法はこんな感じだ。緩まない様にキツめに固定してくれ」
そう言いながら、手足を見せてくる。
それを見ながら、見よう見まねで装備を始めた、両足の内側に爪の先が向くように足裏に取り付け革ベルトで固定する。
手の方も同様に手のひら側に爪、手首側に爪の先が向く様にして革ベルトに取り付けていく。
「こんな感じで、いいか?」
「初めてにしては上出来じゃないか」
何の安心感も無い言葉に呆れながらも、こんな奴だしなと肩を竦めた。
木に近づき幹に手をかけ、手のひらの爪の感触を確認してみる。
ガッチリ食い込むわけでは無く、引っ掛ける程度の様だ。
足の方は体重をかけると食い込む感じがすることはわかった。
「登ってみるか、ただし、落ちてこられるとヤバいから反対側でな。何かを見つけたら、すぐに伝えろよ」
「おお、わかった」
その答えを合図に、木を登り始めるのだった。
書き溜めが無いため、更新に時間がかかっております。
掲載は1週間間隔で出来れば良いなと思っております。