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記憶と記憶の狭間で

メイジ-は、憲兵からの紙切れを受け取り、内容をすぐに確認した。

市長からだっ!!

彼が、なぜだかメイジ-に会いたいとのメッセージであった。そして、彼女は市長の館に招待されてしまっている。

「今すぐ来て下さい。市長がお呼びです。」

全く心当たりがない。メイジ-は首をかしげた。なぜ、呼び出されたのか見当もつかないのだ。しかし、市長の言う事ならしかたがない。行くしか選択肢はないのだ。メイジ-は市長の指示に素直に従い、憲兵と共に市長の館へと向かった。

市長の館は、街の中心にあり、レンガ造りの大きな建物で、一見外壁は質素だが、とても目立つ建物であった。

市長の館についたメイジ-は、言われるがまま建物の中へと足を踏み入れていく。どんどんと奥に案内されるも、あまりにも内装が豪華すぎてメイジ-は不思議に思っていた。

1番奥の部屋に案内されたメイジ-は、ノックと共に部屋に入っていく。部屋はとても広く、王様の玉座のような雰囲気を漂わせて、金色の高級感があふれる椅子に市長は足を組んで座っていた。

メイジ-が、市長と目があうと、市長は笑顔をメイジ-に向けた。好青年だ。と、人々がいう理由が分かる位、穏やかな雰囲気をかもしだしていた。

「最近、君が切り裂き事件の事を調べていると聞いてな。君の事が気になっていたんだ。どうだ、解決の手がかりは、進捗状況を報告してくれないか。」

メイジ-が部屋に入るとすぐに、用件が伝えられた。事件の事で呼び出されていたのかと、メイジ-はさとるも、残念ながら報告できることなどないのだ。

「いえ、今の所、何も、手がかりがありません。」

メイジ-は、目を伏せながら、下を向いた。この羞恥心は、写本師としてのプライドなのか、自分の未熟さなのか、市長の威圧感からなのか、メイジ-自身も分かっていなかったが、なぜだが居心地がすごく悪かった。

「そうか、私達も調べているが、全く犯人の情報がつかめていない。なー。君はなぜ、あきらめないんだ? そこまで事件にこだわって調べているのは仕事だからか。他に理由があるなら、教えてくれっ。」

市長の少し強みのある声を耳にしたとたん、メイジ-はおもわず顏をあげた。メイジ-と市長の顏と顏、目と目が合う。彼の鋭い目つきの奥は、淡々としており感情を読み取る事はできないが、力強さとは違う凄みが現れていた。左目は、傷で塞がれているのは確かなのに、なぜだかその奥から覗かれている怖さがあった。

嘘をつく事は許されない。なぜだか、メイジ-はそう瞬時に感じ取り、正直に自分の過去の事を話し始めた。

記憶のないこと。

自分の両親をしらないこと。

なぜだが、10年前の人狼事件が気になっており、失われた記憶との関連性があるのではないかと思っていること。また、最近の切り裂き事件と人狼事件は、本当はつながっているのではないかとも考えている事を伝えていく。それは、詳細を事細かに語るのではなく、上司に報告をするように、分かりやすく要点のみ説明していった。

「君は、いつから記憶を失っているのか。」

興味深そうに、眉をひそめながら市長はメイジ-に訪ねていく。

「10年前ぐらいからだと思うんです。でも、それすらも、本当に昔の事が分からないんです。」

「そうか。お気の毒に。色々と話をしてくれてありがとう。私は、できるかぎり君に協力をしたいと思っているんだよ。」

そう優しい雰囲気をかもしだしながら、市長は話を続ける。

「もしかしたら、君の助けになるかもしれない。君に、この情報を与えよう。」

そう言いながら、市長は立ち上がり、なにやら紙に文字を書きつづっていく。書き終えると、微笑みながらメイジ-に近づいて「どうぞ。」と、余計な言葉を加えずに、ただ1枚の紙切れを手渡していった。

メイジーは、すかさず、その場でその紙を開いて中身を確認していく。


【メッセージ】

占い師・・・人間の森の山奥の洞穴

騎士・・・・無法者の酒場の奥のガラクタ屋敷

狂人・・・・監獄


紙の内容は、3人の人物と居場所が書かれており、メイジ-は、その内容を確認すると市長の顏をのぞき込むように顏を上げていった。市長は、無表情で、しかし気味が悪いほど優しくメイジ-に話しかけていく。

「彼らは、10年前の人狼事件の生き残りだ。もしかしたら・・・・君の記憶につながる何かがあるかもしれない。」

その市長の言葉を聞いて、メイジ-の目は希望が出てきたかのように、揺れ動き、しかし動揺を市長に悟られないように意識をした。

メイジ-は市長にお礼をいい、彼らに会いに行くことにした。

メイジ-の後ろ姿を見送りながら、市長は満足そうに腕をくんだ。


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