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光輝く街にひそむ闇

太陽が光輝き街を包みこむと、赤く色づいた土があらわとなっていく。

赤く照り輝く土壌は、十分な水分を保有したため、あふれでる血潮を受け止められずにいた。

また、だっ!!

いったいもう何人目になるのだろう。

1つの叫び声から、人々が集まり、その事実は次第に、大きな恐怖へと成長していく。

何度、繰り返せば気がすむのだろう。

また、人が殺された!

切り裂かれた遺体をみれば、人々はさまざまな噂を話題にする。

「切り裂きジャックが現れたっ!!」

「10年前に姿を消した人狼が生きていたんだ!!」

と、さまざまな憶測がとびかっていく。

それらの言葉をかき分けるかのように、1人の青年が人だかりの中に入っていく。

彼は、まっすぐと遺体に歩み寄り、遺体に触れて祈り始めた。

それを見た人々は、言葉を発するのを辞めて、おのおの手を合わせていく。

青年の右目からひとすじの涙がこぼれおち、赤く染まる大地へと落下していった。

彼は、最後に手を合わせ、周囲の市民を見渡してから力強く立ち上がった。

彼の右目は真っ赤に充血しており、一方で傷のある左目は隠すことなく閉じられていた。

「私が、市長になってから、この切り裂き事件が起こるようになった。」

それは、真実であった。

彼が、半年前に市長になってから、この街で人が殺害されるようになった。

きまって夜中に殺され、翌朝発見されるその遺体は、毎回必ず刃物のような物で切り裂かれていた。

「私達は、対策を練って、犯人を捕まえようとしている。この大きくなった街に対して・・・いや、もしかしたら、私に対しての反発かもしれない。」

青年は涙を流しながら話し続ける。

「必ず、犯人を捕まえて見せる。だから、皆も協力してくれ。日が暮れたら絶対に外に出ないで欲しい。戸締りをしっかりとして、建物の中にいてくれ。私は2度とこのような被害を出したくないのだ。頼むから・・・」

言葉につまる青年は、開いていた右目を閉じて、首を横に振り、うなだれるようにしてこの場を離れようとする。

市民達も彼の努力は評価している。だからこそ、彼が市長にふさわしいと思い選んだのだった。

若き頃の彼は、荒れ果てた村々を統合し、人々を励ましリーダー的な存在となり、この街を作り上げてくれた。

10年前に人狼に襲われて、崩壊した村々は、絶望の真っただ中にいた。そこから、こんなに大きくて、豊かな街になる事を誰が予想できたのだろうか。

誰もが、10年前の悲劇。人狼事件の事を忘れられると思っていた。しかし、悲劇はこの街でも起き始めるのだ。

市長は、すごく頑張ってくれている。この街が大きくなったのは、間違いなく彼のおかげであり、やり手の彼は仕事もでき、人当たりもよい。人気者でもある。彼にまかしていれば、大丈夫。そんな市民の期待はあった。

しかし、一方で誰もが彼の黒い噂を耳にしている。

彼は、不思議な幸運を持っていた。あまりにも、幸運に恵まれすぎていて、出世がスムーズに行き過ぎたのだ。だからこそ根拠のない憶測が飛び交っていた。

例えば、この街の市長を決める際に、対抗馬で出た合併した村の元村長も支持をかなり集めていた。しかし、この元村長は、狩りで獣に襲われて亡くなってしまったのだ。タイミングがかなり良すぎてしまった。

噂にかかれば、市長になりたかったから、市長の手下が殺したとなってしまう。

彼の幸運は状況が悪い。どんどんと街は豊かになっていく事実。しかし、この街の豊かさがどこからくるのか誰も知らないのだ。彼の幸運は異様な違和感を生み出しているのは本当で、怪しすぎるぐらい幸運な男であった。

市長は、切り裂き事件について対策をしていると言いつつも、いまだ犯人は見つからず。その不安から市民は10年前の人狼事件を思い出すようになってしまった。人々の恐怖心は、日に日に大きくなっていく。

市長と呼ばれるその青年は、気落ちしながら、この場を後にし、市長の館へと戻っていく。

その彼をただひたすら眺める市民と、遺体を片付ける憲兵がこの場に残り、さまざまな恐怖をいだいていた。

活気を取り戻したこの街は、結局の所、光と闇が混在していた。

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