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第二十七便 無駄なフラグを立てないでっ!

七つ道具(七つでは足りない)

のこぎり あると便利です。


『お姉様!』


 オレとお兄ちゃんががっかりしてると、後ろからきゃんきゃん声が響いた。

 振り返ると、グリシーヌ以上の小娘を乗せた馬が走ってきた。

 

『ヴィオレット!』

『お姉様!』


 ヴィオレットとかいう小娘が馬から飛び降り、グリシーヌに飛びついた。王様が無駄な笑顔を浮かべながら二人を見ている。

 一通りオレたちを無視した後、小娘が振り返ってお兄ちゃんをにらんだ。


『お、おまえが荷車の騎士か?』

「あ、はじめまして」

 お兄ちゃんが営業スマイルで応対する。

『もう知ってるの、ヴィオレット?』

『急用で城に戻ってくる途中、すれ違った伝令に聞きましたの! で、ヴィオレット、お姉様が心配で心配で馬を飛ばして戻ってきたんですの!』


 ちなみに、〝ですの〟もオレのアレンジだから。バカっぽくてぴったりだし。


『前線は大丈夫?』

 グリシーヌが心配そうに訊いた。

『今はほぼ休戦状態だから大丈夫ですの』

『そう、良かった』

 グリシーヌが微笑んだ。

『あ、あらためて紹介するわね。といっても、ヴィオレットはもう知ってるみたいだけど、この方が』

『おまえが悪名高い荷車の騎士!』

 ヴィオレットがグリシーヌの言葉を遮り、お兄ちゃんをもう一度睨む。

『お姉様を誘拐し、陵辱しようとした!』

『ちょっとヴィオレット! 違うし、荷車の騎士様に失礼でしょ!』

『そしてこいつが、お姉様を食い殺そうとした凶悪な魔獣、フッフ!』

『ヴィオレット!』

『だからグリシーヌなんか誰が食うか! お腹壊すわっ!』

『なんだと! お姉様ほど美味しそうなご馳走なんてありえないですの!』

『お前のお腹と頭がおかしいんだよ! この、姉妹百合娘が!』

『何ですの、その変な言葉は?』

『お前こそ何なの、その変な思考と髪型は?』

「フッフ! また失礼なこと言ってるね?」


 お兄ちゃんがオレとヴィオレットの間に割って入った。


「ええと、ヴィオレット姫様? フッフが大変失礼しました」


 お兄ちゃんは通じないのに平気で日本語で話しかけている。

 営業スマイルを絶やさずに。


『おのれ、よそ者の分際で、ヴィオレットを子供だとバカにしてますの』


 おいおい、話も通じないのに、誤解して敵視して、それって、まさか……?


『こう見えても、ヴィオレットは、男子に混ざって最前線で戦う兵士だと言うのに』


 ヴィオレットは歯ぎしりをすると、「ビシッ」とお兄ちゃんを指差した。


『け、決闘ですの! 決闘を申し込みますの!』


『ば、バカ、やめろやめろやめろ』

 オレは思わず怒鳴った。


 本当マジでやめて。

 フラグの匂いがビンビンするじゃん!


 決闘

 →ヴィオレットがお兄ちゃんに軽くあしらわれる

 →でもお兄ちゃんは優しいからボロボロのヴィオレットを抱き起こす

 →お兄ちゃん「いい勝負だった」(手抜きまくりなのに)

 →ヴィオレット『素敵』

 →そばで見ていたグリシーヌも『素敵』

 →姉妹丼


 キーーーーーーッ!!!

 お兄ちゃんの浮気者!

 女たらし!!!


「フッフ、また変なこと考えてるね?」


 ばれてた。

 でも、これがオレの戦い。

 フラグは折るんじゃなくて、立つ前に阻止する。


〝達人は、そもそも危険に遭わない〟っていうことわざ(?)もあるし。

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