第二十一便 「はい、あーん」なんてさせないでっ!
七つ道具(七つでは足りない)
レンチ ベッドを組んだり、分解したり、その他いろいろです。
『おはようございます』
後ろから突然声を掛けられる。
振り返るとグリシーヌが立っていた。
振り返る??
もう一度お兄ちゃんを見る。
もう一度グリシーヌを見る。
「お、オレ、振り返ることができるよ! お兄ちゃん!」
「そうみたいだね」
お兄ちゃんが笑った。
「それに合わせて、画面にも後頭部が映るよ」
は?
余計な機能を!
い、いや、考えようによっては、お兄ちゃんがオレを後ろから……。
『……ございます』
お兄ちゃんがオレを後ろから!!
『うございます。そしておはよう、フッフ』
あーっ!!
せっかくお兄ちゃんと楽しく過ごしてたのに!
「おはようございます、姫様」
お兄ちゃんが車から降りた。
言っておくけど、真横は死角だからね。
あ、やっぱ黙ってよ。
『お忙しいようなので、朝食をお持ちしました』
ちなみに、通訳はこっちでもできる。
そもそも、〝考える〟ってことだって。
そのあたりの基本的な機能は、全て本体で行っているみたいだ。
「あ、わざわざすみません。お姫様自ら」
『我が国は小国、そして今は非常時。身分関係なく何でもします』
グリシーヌがにっこりと笑った。
ムカつく。
悪意がないところが更に。
お兄ちゃんはお礼を言いながら朝食の入った籠を受け取った。
「姫様、食事は?」
「あ、まだです」
グリシーヌが頬を染めた。
「よろしければ……」
あ!!
もしかしたらグリシーヌ、
『荷車の騎士様、はい、あーん』
「おいしいよ、グリシーヌ。次は君をいただくとしようか」
とか言う展開を考えてんじゃないだろうな!?
このビッチが!!!
「お、お兄ちゃん! とりあえず積み荷をチェックした方がいいんじゃない?」
オレが慌ててお兄ちゃんに話しかける。
「ほ、ほら、昨日お兄ちゃんも行ってたけど、サイドターンとかして、荷崩れしてるかもしれないし」
「そうだね」
お兄ちゃんがオレに頷くと、グリシーヌに笑いかけた。
「姫様。姫様は朝食はまだだというのに、給仕までさせてしまい、すみません」
「あ、いえ。私は」
「どうぞ城内に戻って食事をなさってください。俺とフッフは、荷物を確認したり その他あれこれやることがありますので、後でまたお伺いします」
『あ、は、はい』
グリシーヌが露骨に残念そうな顔をする。
ちょっとかわいそうかも。
『グリシーヌ。オレとお兄ちゃんも、後でちゃんと昨日の中庭の方に行くから』
少しだけフォロー。
グリシーヌも小さく頷き、『待ってるわ、フッフ』と言うと背中を向けた。




