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第五十一話 悪魔の最期

遅れました

 光属性の神話級魔法【クラウ・ソラス】。

 それを魔剣としてカズキが装備すると、本来の攻撃方法であるレーザーを発射する代わりに、超高速で自在に動き回る事が可能になる。

 何故そのような事が出来るのかは、当の本人であるカズキにも分からない。

 だが、猫達との時間を何よりも大切にしているカズキには、この効果は嬉しい誤算だった。

 剣士でもあるカズキに、日々の鍛錬は欠かせない。

 だが、鍛錬に時間を掛けると、猫に触れる時間がその分減ってしまう。それを解決してくれたのがこの魔法だったのだ。

 この魔法を使って一時間の鍛錬を行っても、現実には僅か一分しか経っていない事に気付いたカズキは、毎日のようにこの魔法を使っている。

 



 切り札である、時間を操る魔法。それを凌駕するスピードで動くカズキという存在に、悪魔は絶体絶命の窮地に立たされていた。

 しかも、自分は極度に消耗しているのに、対するカズキは余裕があるように見える。

 大気中の魔力を利用できる悪魔であっても、自分の魔力を全く消費しないわけではない。魔法の難易度が上がるのに比例して、自前の魔力の消費も増える。

 時間を操る魔法は、悪魔の魔力の大半を消費しないと発動しない程に、難易度の高い魔法だった。

 対するカズキはというと、全て自分の魔力で賄っているにも関わらず、全く消耗した様子が見えない。

 今までに使った魔法だけでも、軽く悪魔の十倍以上の魔力を消費しているにも関わらずだ。

 最早打つ手はないと観念しかけた悪魔の目に、『時空の歪み』が映る。彼(?)は、カズキ達がこの空間に現れるまでにしようとしていた事を思い出した。

 

「ッ!」


 物も言わずに『時空の歪み』へと駆け出す悪魔。意表を突かれたのか、カズキからの攻撃はない。

 無事に『時空の歪み』へと辿り着いた悪魔は、魔界への門を繋げようと、残った魔力を込め始めた。

 

「・・・・・・」


 それをジッと見つめるカズキ。その顔には笑みが浮かんでいた。

 当然ながら、悪魔の行動を止めなかったのはわざとである。『時空の歪み』への干渉の仕方を見て、チOオちゅーるを自分で調達する方法を確立したい狙いがあったからだ。

それから程なく、カズキの思惑通り、チOオちゅーるが『時空の歪み』から次々と出現し始めた。


「ちゅーる♪ちゅーる♪チOオちゅーる・・・・・・」


 ご機嫌にCMの歌を歌いながら、超高速でそれを拾い集めるカズキ。 

 その間にも、悪魔の様子を観察するのは忘れない。

 やがて、チOオちゅーるの出現が止まる。それと同時に、カズキが今までに感じた事の無い、強大な魔力を持った存在が『時空の歪み』の向こうに現れた。悪魔の執念が実った瞬間である。


「お?」


 だが、カズキがソレに注意を払ったのは一瞬だけだった。何故なら、カズキにとっては、目の前のチOオちゅーるの方が大事だからである。

 その間にも状況は進む。『時空の歪み』の向こうに現れた存在が、悪魔と同じように魔力を込め始めたのだ。


「伯爵さま!」


 次第に大きくなる『時空の歪み』の向こうにいる存在に、悪魔がそう声を掛けた。


「伯爵?悪魔にも爵位とかがあるのか」


 全てのチOオちゅーるを拾い終わったカズキが呟くと、それを耳聡く聞きつけた悪魔が勝ち誇った声を上げる。


「油断したな魔法使い!伯爵様の御力は私の比ではないぞ!」


 途端に小物臭くなった悪魔を無視して、カズキは『時空の歪み』へと近づいた。そして・・・・・・。


「八ッ!」


 気合一閃、魔剣『クラウ・ソラス』を伯爵とやらに振るった。

 カズキが近づいてきても余裕をかましていた伯爵は、カズキの動きに全く反応できず、その一撃をまともに喰らい、消滅してしまった。


「伯爵様ぁー!」


 呆気なく消滅した伯爵に向かって、悲痛な声で叫ぶ悪魔。

 だが彼は忘れていた。そもそも、カズキと戦っていたのは自分だという事を。

 叫んだ直後にカズキの剣が翻り、その身を両断された時、悪魔はその事実を思い出した。



 

「さて、終わった事だし帰るか」


 突然そんな事を言い出したカズキに、三人は困惑した。

 それも当然の話である。何しろ、カズキと悪魔が対峙したと思ったら、次の瞬間にはこの台詞だ。

 しかも、カズキは魔剣【クラウ・ソラス】の代わりに、大量のチOオちゅーるを持っている。正直、全く意味が分からなかった。


「・・・・・・えーと、色々と聞きたい事があるんだけど」

 

 三人を代表して、ラクトがカズキに声を掛けた。


「おう。何でも聞いてくれ」


 目当ての物が大量に手に入ったカズキは、ご機嫌な様子でラクトに応える。


「ありがとう。それじゃあ聞きたいんだけど、悪魔はどうしたの?」

「倒したぞ?」


 カズキの返答は簡潔だった。問題は、簡潔すぎて三人が聞きたい事に何一つ答えていない事だろう。

 

「・・・・・・どうやって!?というか、今の一瞬の間に何が起こったの!?」

「一瞬?・・・・・・あ、そっか」


 ラクトの魂の叫びを聞いたカズキは、そこで漸く三人が困惑している理由に気付いた。

 鍛錬の時と、()()()()()()()()()()()()にしか【クラウ・ソラス】を使った事が無いため、三人にとっては一瞬の出来事だった事を失念していたのである。

 それを理解したカズキは、魔剣【クラウ・ソラス】を手にすると、超高速で動くことが出来るようになるのだと、三人に説明した。


「・・・・・・成程。それなら時間を操る魔法に対抗できますね」

「流石カズキさんです!でも、その場面を見れなかったのは残念でした。後で詳しく話を聞かせてくださいね?」

「ああ。それじゃあ上に戻ろうぜ。報酬の交渉をしないといけないからな」


 カズキはそう言って、寝ているナンシーを慎重に抱き上げると、皆を促して階段を上り始めた。

読んで下さってありがとうございます。

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