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第四十六話 絶体絶命? 

 マイネが悪魔(デーモン)と呼んだ存在は、蝙蝠の翼と角を除けば人間と変わらない姿をしていた。

 彼? はカズキ達の姿を認めると、煩わしそうに腕を一振りする。

 まるで、纏わりつく虫を払うような仕草だった。

 ただそれだけの仕草だったのだが、そこから不可視の衝撃波が発生。彼の周囲に散らばっていた物を()()破壊しながら、カズキ達へと殺到する。

 それをカズキは察知し、瞬時に障壁を張ることで皆を護った。

 ラクト達が攻撃を受けた事に気付いたのは、カズキが防いだ後の事である。

 

「ほう、今のを完全に防ぐか。さっきの二人と違い、少しはやるようだな」


 悪魔に声を掛けられたカズキは、答えずに三人を振り返った。


「扉に凭れ掛かっている戦士を頼む。辛うじて死んでいないようだから」


 三人は恐怖の所為で見落としていたようだが、カズキは気付いていた。

 その言葉に我に返った三人は、慌てて戦士の様子を確認する。

 戦士が持っている剣は半ばから折れており、左手に装備していたのであろう金属製の盾は、腕ごと砕けて使い物にならなくなっていた。

 身に着けているプレートメイルもあちこち変形していて、その身に受けた衝撃の大きさを物語っている。


「さっきの攻撃をまともに喰らうと、彼等のようになる訳ですか・・・。カズキさんがいてくれて助かりましたね」


 なんとか恐怖を抑えたマイネが、戦士の様子を見て言った。


「はい。フローネさんの使う【ホーリーシェル】ならば防げるでしょうが・・・」


 【ホーリーシェル】とは、高位の司祭にしか使えない、極めて強固な神聖魔法である。

 

「確かに防げるでしょうが、それだけでは勝てません。魔力が尽きれば終わりですから」


 戦士の治療をしながら、フローネがラクトの言葉を引き継ぐ。

 悪魔の口振りから、本気を出していないのは明白だからだ。

 そんな話をしている間にも、フローネは治療を続ける。

 そして、命に別条がない程に持ち直したところで、ラクトとマイネに声を掛けた。


「お待たせしました。もう動かしても大丈夫です。ラクトさん、マイネさん、運ぶのを手伝って下さい」


 何故か動かない悪魔の様子を窺いながら、三人は協力して戦士を運ぼうとした。

 だが、それをしようとした時に、三人は異変に気付く。

 先程まで出入り出来た筈の扉が、いつの間にか通行出来なくなっていたのだ。

 カズキがそんな事をする理由はないので、自ずと答えは一つ。

 間違いなく悪魔の仕業だろう。


「不味いですね。このままだと、カズキさんの足枷になってしまいます」

「とは言え、カズキが警戒するような相手の攻撃を、僕たちで防ぐのも難しい。・・・フローネさん、魔力はどれ位残っていますか?」


 ラクトの問いに、フローネは正直に答えた。


「ほとんど残っていません。簡単な治癒魔法を一回使っただけで、魔力切れで倒れると思います」


 それも無理はないと、ラクトは思った。

 瀕死の重傷を負った人間を、立て続けに二人癒したのだ。

 フローネでなければ、一人も助けられなかったに違いないのだから。

 

「こうなったら、外に応援を頼みましょう。学院長やソフィア様、エルザさんとクリスさんに連絡して、誰か一人でも来てくれれば・・・」


 それまでは一か所に集まって、カズキに悪魔の攻撃を防いでもらう。

 四人の内の誰か一人でも来てくれれば、状況を打開出来る筈だとラクトは語った。

 問題は、次元ポストでの連絡がこの場所から可能なのか? という事だが、これはもう賭けだった。

 それに、一緒に買い物に来ていたカリムが異変に気付き、誰かに連絡してくれる可能性もある。

 ラクトの考えにフローネとマイネも賛成し、まずはカズキと合流しようと三人が考えたところで、肝心のカズキの様子がおかしい事に気付く。

 悪魔と対峙していたカズキは、その場にしゃがみ込んでいたのだ。


「まさか、既に何らかの攻撃を受けた・・・?」


 後ろ姿なので定かではないが、カズキは肩で息をしているように見えた。

 三人は意を決して、カズキの傍へ向かうことにした。

 もしカズキが戦闘不能状態に陥っていたならば、自分たちが助かる可能性は無い。

 ならば、カズキが動ける事に期待して、近くにいた方が良いと判断したのだ。

 戦士を三人で抱えて、悪魔を警戒しながらカズキの元へと辿り着くと、カズキがしゃがみ込んでいた理由が分かった。

 彼は、ナンシーとクレアにチOオちゅーるを与えていたのである。

 肩で息をしているように見えたのは、ペーストを絞り出す作業を錯覚しただけだった。


「「「「・・・・・・」」」


 三人は目の前の光景に、抱えている戦士を取り落としそうになる。

 そんな様子を気にも留めないカズキは、優しい表情で二匹にチOオちゅーるを与えていた。

 

「「ミャー」」


 程なくチOオちゅーるを完食した二匹は、物欲しげな顔? をして追加を催促する。

 応じるのかと思われたカズキは、しかし心苦しい表情で首を振った。


「ごめんな。もっとあげたいのは山々だけど、おやつを食べ過ぎると晩御飯が食べられなくなっちゃうだろ?」


 子供を持つ親のような顔でそう言って、カズキは二匹を撫でる。

 そして立ち上がり、漸くラクト達三人に目を向けた。

読んで下さってありがとうございます。

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