第三百五十二話 邪神との戦い その3
「どうする? 封印するか?」
カズキの魔法も物理攻撃も効かなかったのを見て、クリスが封印を提案する。
「そうした方が良いかも。女神様も、一度で邪神を倒せとは仰ってなかったみたいだし」
エルザはフローネに下った神託の内容を思い出していた。
邪神を倒せる力を持った戦士を見つけたので、鍛えあげれば邪神を倒せる可能性があるという話だったな、と。
「成程。カズキにとって邪神の封印なんて片手間で出来るレベルだったな。女神様もそれを見越して、トライアンドエラーをしろ、と言ったのかもな。最終的に倒せればそれでいいわけだし」
実際には間違っているのだが、エルザとクリスはそれで納得してしまった。
それは勿論、カズキが女神レミアの期待していた戦士としての力とは全く別の所で、より魔法に適性があった事による勘違いから来ている。
つまり二人は、『カズキがいつか、邪神を滅ぼせる魔法を開発する』と、女神レミアがそう神託を下したと解釈したのだ。
「そういう訳だから今回は封印しましょう。そして邪神を確実に倒せる魔法を開発したら、その時にまた再挑戦すればいいわ」
「わかった。でもその前に、捕らえた勇者を処分してもいい? こいつら如きの為に、自分の魔力を割いているのは何か気持ち悪いし」
「それもそうね。なら当初の予定通り、邪神に対する武器として使いましょうか」
カズキの尤もな提案に頷いたエルザがGOサインを出すと、カズキは即座に【次元牢】の魔法に捕らえていた勇者たち(起きているとうるさいので魔法で眠らせてある)を目の前に並べる。
彼らに共通しているのは、全員がカズキたちに敵対して返り討ちにあった事。その為、全員が何処かしら怪我をしていて、最近捕獲された奴の中には、未だに血を流している者もいた。
「よし、最初はお前だ」
カズキはその内の一人を適当に選ぶと魔法で宙に浮かせ、頭を邪神に向けるとドリルのように回転を掛ける。そして――
「勇者ミサイル!」
という掛け声と同時に、邪神に向けて発射した。すると・・・・・・
「オオオオオオ・・・・・・」
今までこちらには見向きもしなかった邪神が、初めてカズキ達に意識を向けたのだ。
「どうやらダメージが入ったみたいだな。邪神の奴、明らかにこっちを見てるぜ」
「そうみたいね。だけど、どうしてさっきまでは入らなかったダメージが入ったの?」
「・・・・・・思い付いた事があるから検証してみる。ねーさんは不本意だろうけど、勇者達を回復してくれる?」
「構わないわ。邪神を倒すのに必要なんでしょ?」
「俺は?」
「今まで通り魔物の駆除。場合によっては勇者を護ってもらう必要があるかもだけど」
「仕方ねえな」
「ありがとう。・・・・・・よし! これでダメージが通る筈!」
二人の協力を取り付けたカズキは、嫌々ながらも魔法で勇者をパンツ一枚の状態にして、検証の為に2度目のミサイルを発射。再び邪神にダメージを与える事に成功した。
「良し! 予想通りだ!」
カズキが予想し、検証した事。それは、生身の勇者で攻撃すれば、邪神にダメージが入るのではないかという事だったのだ。
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カクヨム様の方で一話先行で投稿していますので、続きを早く読みたい方はそちらをチェックしてみてください。




