第三百五十一話 邪神との戦い その2
「成程。あれ以上の攻撃力が必要なのか」
ドクズ・サイトウの攻撃の結果を受け、手持ちの魔法の中から神話級――この呼称を知るのは一ヵ月ほど後の話だが――の魔法しか使えない事を知ったカズキは、ドクズ・サイトウが邪神の近くにいる事には一切構わず、即座に全ての属性の魔法を発動。その全てが狙い過たず邪神に直撃し、その姿が爆炎やら砂埃やら水蒸気やらに包まれた。
「ギャアアアアア!」
「やったか!?」
直後に聞こえた悲鳴にクリスが全力でフラグを立てに掛かる。そして案の定・・・・・・。
「・・・・・・駄目か」
結果を確認しようと、魔法で爆炎やら砂埃やら水蒸気やらを吹き飛ばしたカズキが邪神の様子を見て呟く。
そこには何事もなかったかのように、攻撃を受ける前と全く同じ様子の邪神が、相も変わらず淡々と魔物を生み出し続けていたのだ。
そしてクリスが勘違いした悲鳴は、何故か満身創痍で邪神の足元に転がっているドクズ・サイトウのものだったらしい。
「どういう事だ? カズキの魔法が通用してねえぞ?」
「おかしいわね。威力が足りないのかしら? それか、直接攻撃じゃないと駄目とか?」
「・・・・・・試してみる」
邪神に対して出来ることは無いからと、邪神が生み出した魔物を暇つぶしに倒しながら観戦していたクリスとエルザが、カズキの魔法が通用しなかった理由を考察する。傍らでそれを聞いていたカズキも他に案が思い浮かばなかったので、エルザの説を検証してみる事にした。
「来い」
そう呟いたカズキの眼前に、剣の形を象った炎が現れる。
神話級魔法【レーヴァティン】を魔改造し、物質と化したカズキの専用武器。『魔剣レーヴァティン』だ。
「行ってくる」
カズキはそれを携え、ドクズ・サイトウ以上の身のこなしで邪神に肉薄すると、ひと呼吸で無数の斬撃と刺突を繰り出した。だが・・・・・・。
「効いてないな」
結果は先程と全く同じだった。生み出した魔物は殆どがカズキの攻撃に巻き込まれて倒されたが、邪神本体には全くと言っていい程、傷も付いていなかったのである。
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