第三百三十一話 クリス、終生のライバルを見つける その5
コボルトエンペラーとクイーンを倒したカズキ達は、アークバ王国王都の冒険者ギルドへ帰還した。
「おっ、良い感じに仕上がってるな!」
そんな彼らに声を掛けたのは、別行動で魔物の群れの殲滅に向かっていたクリス。
彼はアマラント達よりも遠い場所での依頼だったのだが、カズキの成長が楽しみすぎて、僅か半日で移動と討伐を終え、冒険者ギルドへ戻ってきた。
自分達が戻るのは最短でも一週間後だとアマラントが話していたにも関わらず。まるで遠足前日の子供である。
「お帰り、みんな。そっちはどうだった?」
クリスの様にギルドに入り浸る事はせず、王都近郊の村や町を巡って怪我人や病人の治療をしていたエルザは、アマラントのパーティが受けた依頼の詳細を尋ねる。
「エンペラーが産まれてやがった。カズキがいたから問題なったが、普通にアレを倒すのは無理だな。雄叫び一つで足が竦んじまった」
アマラントは素直に自分達が恐怖に怯えてしまった事を告白すると、コボルトエンペラーとの戦いについて詳細を語った。
「エンペラー含めた群れを魔法抜きで1人で殲滅か! いいねえ。カズキには素質があると思っていたが、ブチ切れた時しか本領を発揮できなかったのを、意識的に出来るようになったわけだ!」
クリスが言っているのは、勇者に占領された穀倉地帯、ロベールに行った時の話である。
その時のカズキはガリガリに痩せた猫たちを魔法で発見して我を忘れ、無意識に魔力による身体能力強化(クリスに言わせれば気合)を使って城壁の上に着地。門番二人を殴り倒し、一目散に猫たちの元へ駆けつけたという事があったのだ。
「良し! 早速手合わせと行こうぜ!」
これ以上は待てないと、クリスがそう言って外に向かって歩き出す。だが、エルザがクリスの首根っこを掴んだことで、外に出るのは叶わなかった。
「明日にしなさい。カズキは依頼を終えて帰ってきたばかりなのよ?」
「えー? カズキが移動くらいで疲れる訳ないじゃん」
「・・・・・・まあそうだけど」
カズキに対して過保護な自覚のあるエルザは、クリスに言われて渋々手を離す。
召喚直後から毎日の様に顔を合わせてきたのに、ここにきて一週間離れてしまった事で、心配性が顔を出してしまったらしい。
「心配してくれてありがとう。だけど大丈夫だよ」
当のカズキはクリスの言葉を受けて、うっすらと口元に笑みを浮かべていたのだが。
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