第三百二十八話 カズキ、魔法の使用を禁止される その2
救援要請のあった村に辿り着いたカズキとアマラントパーティは、村で現在の状況を聞くと、休む事なく周囲の偵察を始めた。
駆け出し冒険者の奮戦の甲斐もあり、ここ最近は襲撃頻度が落ちてきたものの、村の周囲にいるコボルトの数は、減るどころか増える一方だという話を聞いたからだ。
「恐らく村の戦力を計っていたんだろう。君たちがこの村に残っていなければ、今頃は村が壊滅していてもおかしくなかった。ギルドへの救援要請も含めて、良い判断だったな」
一通り村の周囲の偵察を終えると、アマラントはそう言って駆け出し冒険者を労い、今度はカズキに声を掛けた。
「魔法を禁止しておいて何だが、村の周囲を壁で囲う事は可能か? 元を絶つために打って出たいところだが、現状の戦力だとそれも難しいんだ」
今回、カズキが同行する事になった為に、追加の戦力は出せないとギルドからは言われている。
一人でエンペラー種を倒せる上、強固な要塞すら一瞬で造り出してしまう人間がいるのに、それ以上の人員が必要だとは思えないというのがその理由だ。
人類の存亡が掛かっている時に、『カズキをクリスのライバルに育てたいから、追加の人員が欲しい』などと言う、極めて身勝手な話が通用する訳が無いのである。
「わかりました。じゃあ早速」
軽い返事と共に請け合ったカズキによって、村の周囲に石の壁が出来上がる。
「ありがとう。では、今日はゆっくり休んでくれ。明日は朝から忙しいからな」
アマラントはそう言うと、カズキの造った石壁の事を説明する為、村長の元に向かった。
「行くか」
翌日の朝。早い時間に起床したカズキとアマラント達は、村を出発すると少し離れた場所にある森へ向かった。
昨日、村の防衛をしていた冒険者の情報に従って森の付近を偵察した結果、コボルトと思われる大量の足跡を発見していたからだ。
「・・・・・・マジか」
そして、森の浅い部分でアマラントパーティがカズキに気配の捉え方や、多対一での立ち回り方を教えながらコボルトを間引いていると、森の奥から無数の小さな気配と、それら全てを合わせ及ばない程に強大な気配が接近してくるのに気付く。
それはアマラント達の長い冒険者生活の中でも初めて感じる、圧倒的な強者の気配。
「コボルトエンペラーだ! 皆、下がれ!」
そう、近頃世間を騒がせているエンペラー種。その内の一体だったのだ。
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