第三百二十四話 クリス、終生のライバルを見つける その1
カズキが勇者を捕獲した翌日。ロベール近郊の、これまた勇者に占拠されていた村をサクッと解放した三人は、ジュリアン経由でアークバ王国の国王に勇者を退治した事を報告。
その報告を受け、アークバ国王は勇者と繋がっていた重臣を捕縛すると、その後の拷問で他に勇者と繋がっている家臣や商人の情報を聞き出し、それら裏切者も捕縛。勇者の影響力を排除する事に成功した。
「それで、勇者を排除してくれた恩人たちはなんと?」
「報酬は全て、今回の件で被害にあった者達への救済に使ってくれとの事だ」
アークバ国王は、ジュリアン経由で届けられた言葉を宰相に伝える。
「流石、役に立たない勇者の代わりに邪神を討伐しようという方達ですな。人間が出来ている」
「全くだな。我らも見習わなければならん。差し当たっては彼らの願い通り、被害者の救済から始めるとしよう。宰相、頼むぞ?」
「はっ!」
斯くしてアークバ王国における一連の勇者騒動は終わりを告げた。
尚、高潔な精神を持った三人の英雄を見習い、決して私利私欲に走らず、懸命に国民の為の政策を打ち出し続けたアークバ王国の国王は、後に『賢王』という名で呼ばれる事になる。
勇者を倒し、穀倉地帯を解放したカズキ達は、当初の予定通りアークバ王国王都の冒険者ギルドへと向かった。
アークバ王国の水源となっている湖にリザードマンが大量発生している事から、エンペラーとクイーンの存在が疑われたからだ。
冒険者ギルドには丁度湖の様子を見に行ったという三組の冒険者パーティが戻っていて、その目で見た事を話してくれた。
それぞれ別の場所を調査していた彼らの話に共通しているのは、日を追うごとにリザードマンの数が増えていた事。滅多に見る事の無い上位種が普通にうろついている事。そして、通常種のリザードマンが上位種並みに強くなっていた事だった。
「それは・・・・・・、ほぼ間違いなくいるわね」
「だな。リザードマンの上位種は昔(三歳の時)戦った事があるが、なかなか強かった。エンペラーなら確実にそれ以上だから、少しは楽しめそうだ」
久しぶりの強敵の予感にクリスが獰猛な笑みを浮かべる。強くなりすぎてしまった為に、勇者はおろか、Aランクの魔物でさえ相手にならない彼の心は、常に強敵を求めていたのである。だが――
「弱っ!」
リザードマンのエンペラーも彼の飢えを満たすこと出来なかった。確かに他のエンペラーと比べれば強かったが、既に人を超越している彼にとっては誤差でしかなかったのである。
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カクヨム様の方で一話先行で投稿していますので、続きを早く読みたい方はそちらをチェックしてみてください。




