第三百十二話 カズキ、空間魔法を使って家を創る その5
「ここが【次元ハウス+ニャン】・・・・・・。私達の世界から隔絶された場所なのね」
「【次元ポスト】は蓋を閉めると空気がなくなるから、生き物を入れてはいけないと教わりましたけど、ここは扉を閉めても空気があるんですね」
フローネの言うように、現在はカズキによって【次元ハウス+ニャン】の扉は閉じられている。にも関わらず、この空間では普通に呼吸が出来ていた。それどころか、先程までいた城の部屋よりも明らかに空気が澄んでいる。
「その話は僕も聞いていたので、魔法を創るときに呼吸出来るように改造しました。そのせいで魔力の消費が増えちゃって、ちょっと手狭になっちゃたんですけど・・・・・・」
カズキはそう言うと、エルザの顔色を窺った。カズキ渾身の一軒家を、エルザは風呂場サイズと言ってのけた事があるからだ。
「使うのが基本的に三人しかいないのだから、これ位の部屋で十分でしょう。何よりカズキに造ってもらった要塞と違って、この世界にいる間は万が一を警戒する必要もない。そりゃあ広いお風呂は魅力的だけど、旅をするのに必要な物でもないしね」
事実、クリスと二人で旅をしていた時(クリスは金の為、エルザは困っている人を助ける為に、辺境の依頼を積極的に受けていた)は野営などザラだった。
その際には魔物や野盗の襲撃なども頻繁にあったし、風呂なんて上等な物もないので、絞ったタオルで体を拭くのが精々だったのだ。
そんなエルザからすれば、【次元ハウス+ニャン】という画期的で規格外なこの魔法に文句をつけるなど、とんでもない事である。
では、何故前回のゴブリン退治の時、カズキに要塞を造らせたのかと思う人もいるだろうが、勿論これには明確な理由が存在した。
ランスリードは騎士団が精強で、更にはクリスを始めとした人外の強さを持つ者が多い為、他の国と比べると魔物による被害が圧倒的に少ない。
ここで問題になるのが、精強な騎士団は持っていても、人外を持たないそれ以外の国だ。
それらの国は騎士団に甚大な被害が出ている為、自国の首都を護るのが精一杯で、地方の防衛までとても手が回っていない。
勿論、いずれ邪神が復活する事はわかっていたので、防衛能力のない村や町の住人は、首都や近隣の町防衛施設のある町などに避難する事になるのだが、いきなり大量の難民が押し寄せる事になるそれらの町には、ある程度の物資はあっても居住する場所がなかった。
予てから邪神復活の予兆を感じ取っていたエルザは、世界中を旅している時にそれらの問題点を解決する術を探していたのだ。
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