第二百九十一話 カズキ、魔剣を量産する その5
「この際だから、全ての装備に魔法を掛けようと思います」
カズキはそう言うと、エルザの普段使いしている装備にまで魔法を掛け始めた。
儀礼用の鎧が終わったら、普段使いの装備にも魔法を掛けろと言われるのが目に見えていたのもあるが、彼自身も魔法を使うたびに色々な発見があったので、少し楽しくなっていたのだ。
「軽い! 軽いわ!」
そう言いながら、エルザは嬉しそうにフル装備(鎧、メイス、盾)で歩き回る。これから始まる過酷な旅を思えば、装備品が軽いに越したことはないからだ。
「カ、カズキ殿! 私の鎧もお願いしたい!」
それを羨ましそうに見ていたのは、誰あろう騎士団長だ。彼は騎士団の長という立場上、戦場に出る時は必ずプレートメイルを身に着けている。
部隊を率いている時、誰が指揮官か一目で分かるようにする必要があるし、指揮をし続ける為には倒れる事は許されないからだ。
そのような事情でプレートメイルを着用する事を余儀なくされている訳だが、出来れば着たくないというのが本心である。そんなところに鎧の重量を軽減する手段が目の前に突然現れたのだから、彼が飛びつくのは当然だった。
「構いませんよ」
一方のカズキも、魔法を掛けるたびに魔力の扱い方に理解を深める事が出来るので、二つ返事で引き受けた。
「おお! これは凄い!」
結果、重量が半分になった鎧を着た騎士団長が、子供の様に飛び跳ねる事となった。
「はしゃいでるわねー」
その様を見て冷静になったのか、さっきまではしゃいでいたエルザが他人事のような顔で宣う。先程の痴態をなかった事にしたいようだった。
「さて、次は性能試験をしましょうか」
だからエルザは、続けざまに次の話題を繰り出す。
「ああ。重量が半分になったという事は、何かを犠牲にしている可能性もありますものね」
すると予想通り、カズキはこの話題に食いつく。普段使いする食器と違って、武器防具が戦闘中に壊れでもしたら大惨事になるのは明らかだからだ。
「じゃあ最初は・・・・・・」
それから正気に戻った騎士団長も加えて、カズキが魔法を掛けた武具の検証を行った。その結果わかったのは、魔法を掛ける前と比べて武具が遥かに頑丈になっていた事と、魔法への高い耐性を獲得していた事。金属であれば何でも重量が半減する事だった。
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