第二百五十四話 カレン、ギルドで絡まれる?
冒険者ギルドで首尾よくカレンの登録を終えた三人は、その足でブロンズダンジョンを攻略。その後再びギルドに戻ってカレンのランクアップをし(オリハルコンランクだった)、ギルド本部へやってきた。
世界中のギルドから情報が集まる本部になら、牛乳をドロップするダンジョンの情報もあるのではないか、と考えたのである。後ついでに、創造神の件が解決した事の報告も。
「・・・・・・牛乳がドロップするダンジョンか。幾つかあった筈じゃが、詳しい事までは覚えておらん。受付の奥にある、【アーカイブ】の魔道具で調べればわかると思うので、済まんが受付でこれを渡してくれんかの」
どこか疲れた様子のガストンは、サラサラと何事かを紙に書きつけると、カズキに渡した。
世界中の瘴気濃度が薄くなった事に伴って境界が復活したのは良いのだが、その前にダンジョンから溢れたモンスターは世界中のあらゆる場所へと散らばっている。その為、今まではそれほど必要のなかった商人の護衛依頼や、モンスターの討伐依頼などが急増し、それに伴ってガストンの仕事も激増してしまったのだという。
「俺たちの世界では、それが当たり前なんだがな」
氷の世界に置き去り(自業自得)にされてからハルザークに辿り着き、カズキが来るのを待っている間、クリスはリリーの依頼を受けて糊口をしのいでいたから、ギルドの混乱ぶりを良く知っていた。
「これまでとは違う世界になってしまったんだから仕方ない。まあ、助言くらいは出来るかもしれないけど。・・・・・・ジュリアンが」
そんな話をしながら、素直に受付に出来ている列へ並ぶカズキとクリス。カレンはクリスが珍しく気を利かせて牛乳を頼み、ギルド併設の酒場のテーブル席でナンシーと一緒にそれを楽しんでいた。どう考えても何かがが起こる状況である。
「おっ? こんなむさ苦しい場所に美少女が一人でいるじゃねーか!」
そして案の定、カレンとナンシーは四人組のむさ苦しいおやじ達に取り囲まれた。その上、おっさん達はカレンに断ることもなく、勝手に同じテーブルにつく。
そして――
「誰だ! この娘を珍しくて愛らしい動物と一緒に置き去りにしたのは!?」
「そうだ! 保護者は速やかに名乗り出やがれ! こんなかわいいお嬢さんと愛らしい動物が拐かされたらどうするんだ!」
「おい親父! グラスと深皿を持ってこい! 健気にお留守番している二人に、一番良いアマルテイアのゴートミルクを振舞ってやる! 丁度手持ちがあるからな!」
「あら~。有難うございます~」
「ミャ~ン♪」
カレンとナンシーの心配をして、甲斐甲斐しく世話を始めた。
因みにだが、冒険者ギルド本部のある街の関係者で、カズキとナンシー、そしてフローネの事を知らない者はいない。
カズキはベヒモスの討伐やらオリハルコンダンジョンの間引きやら、勇者の末裔を奴隷にするやらで顔が売れているし、フローネもカズキと共に行動したり、ナンパしてきた『蒼き閃光』を返り討ちにした事で有名だ。
だからフローネとそっくりなカレンが、ナンシーと二人で牛乳を飲んでいても、態々手を出す者はいない。フローネがいつもの神官服ではなく、村娘風の服を着ていても、『今日はそういう気分なんだろう』と思うだけである。
つまりこのおっさん四人組は、この街を拠点にしていないという事だ。更に言うならば、『アマルテイアのゴートミルク』なる物の情報を持っているという事。牛乳ばかりに目が行っていたカズキとカレンに、新たな方向性を示す存在だったのだ。
「なあ、おっちゃん達」
そこでカズキはクリスに並ぶのを任せて、カレンやナンシーと合流する事にした。文句を言うかと思われたクリスは、意外な事に素直にカズキを送り出す。むしろ頭の上がらない姉とは、積極的に絡みたくないようだった。
「お? どうした坊主!? この嬢ちゃんと愛らしい動物の知り合いか!? 丁度いい! 親父! この坊主にもグラスだ!」
「おっ、いいのか?」
「当たり前だ! 若いのが遠慮なんかするもんじゃねえ!」
「じゃあ遠慮なく。あ、そうそう。俺の名前はカズキだ。で、こっちがカレン。そしてこの子がナンシーだ。あ、ナンシーは猫っていう、全世界で一番可愛い動物だ。不幸にも、この世界にはいないがな」
「ん? この世界にはいない? ・・・・・・という事は、お前さん達は漂流者なのか?」
カズキの最後の言葉に違和感を覚えたのか、おっさん達が一瞬考え込む。そしてリーダーと思しきおっさんが、恐る恐るといった感じで確認の言葉を口にした。
「一応、そういう事になってるな」
「そりゃあ失礼した! 済まんな! この世界の恩人様たちに、坊主とか嬢ちゃんなんて言っちまってよ!」
「お気になさらず~」
「ニャー」
「いやいや、そういう訳にはいかねえ! なんせ俺たちの村は、いきなり近くに出来たダンジョンのお陰で、泣く泣くアマルテイアを手放すところだったんだからな!」
「さっきも言っていたようだが、そのアマルテイアってのは?」
「でけえ山羊だ! コイツがまあ、何とも言えず、上質な乳を出してくれてな! おっと話は後だ! 百聞は一飲に如かずってな!」
丁度グラスと深皿を持ってきた給仕に礼を言って、おっさんが虚空から素焼きの壺を取り出す。不思議な事にその壺と蓋の僅かな隙間からは、黄金色の輝きが漏れ出ていた。
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