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第二百四十四話 どうやら閉じ込められたらしい

「ごほっ! あ~、酷い目に遭ったぜ」


 溶岩に呑まれた直後、咄嗟に『次元倉庫』に避難して難を逃れたクリス(因みにだが、クリスが今回このような賢い行動を取ったのは、カズキが「もし同じような状況に陥ったら、迷わず『次元倉庫』に逃げ込むように」と皆にアドバイスをしていたのを聞いていたからである)は、肺に入ってしまった水を吐き出してから大きく深呼吸し、その場で大の字に横たわって荒い呼吸を繰り返す。

 そして漸く息が整った所で、執念で搔き集めた戦利品である金銀財宝をしげしげと眺め――、


「くそっ!」


 という言葉と共に、その場に叩きつけた。

 苦労して確保した財宝は、その全てが金色や銀色に塗られただけの、ただの石ころや岩だったのだから、そうなるのも当然である。


「・・・・・・あいつは暫く放っておこう」

「「「「「「「異議なし!」」」」」」」


 その様子をカズキの魔法で見ていた他のメンバーは、満場一致でクリスを放置する事に決める。自業自得とはいえ必死になって金を求めるその姿に、居たたまれない物を感じたからだ。


「やっぱ、何もなかったな」


 そうして調査を再開したカズキ達だったが、最初の予想通り、何一つ得る物はなかった。あったのは全て、先程クリスが引っ掛かったのと同一の罠だけである。まるで数撃ちゃ当たるとでも言いたげに、そりゃあもう至る所に設置してあったのだ。


「さて、これからどうしよう?」


 川の調査を終えた一行は、これからの方針を相談する事にした。ここまでの道中、怪しい所を探っては空振りに終わっているが、それをこれからも継続するのか、それとも未だに辿り着いていない、この階層の果てを目指すのかという事だったが・・・・・・。


「この階層の果てを探した方が良いのでは?」


 というフローネの意見に皆が賛成した事で、話し合いをする前に結論が出た。皆が皆、罠のオンパレードに飽き飽きしていたのが理由である。


「とはいえ、どこまで広がっているのかわからない場所を歩いていくのも面倒よね。という訳だから、何か移動が楽になる乗り物とか作れない?」


 先の事を考えて体力の温存を図りたいのか、それともただ楽がしたいだけなのかは当人にしかわからないが、エルザがそんな事を口にすると、皆の期待の籠った視線がカズキに向けられる。どうやら彼らも、何の当てもない場所を延々と歩くのは嫌だったらしい。


「あ、【アイギス】で創るのは止めてね。360度視界が通るのって、何だか落ち着かないし」

「わかった」


 エルザの要望(これも皆が思っていたらしく、誰からも反対の声は上がらなかった)に頷いたカズキは、早速乗り物づくりに取り掛かる。材料はクラーケン捕獲作戦の時に使用した漁船っぽい物だ。

 普段ならそこら辺の地面から適当に金属を調達するのだが、今いるダンジョンにはカズキの魔法が効かないので、一度だけ使って放置していた船を再利用したのである。


「出来た」


 ややあって出来上がったのは、小型の『真・アーネスト号』とでもいうべき物だった。短時間で適当に造ったので、何度か造っている『真・アーネスト号』に無意識の内に似せてしまったらしい。まあ武装はないのだが。


「さあ乗ってくれ」

「「「ミャー」」」

「ニ゛ャー」

「わかった!」


 カズキの言葉に率先して従ったのは猫達とカリム。他のメンバーは見た目が完全に船のそれが、どういう方法で動くのだろうかと気にしながらも、それに続いた。


「取り敢えずは真っすぐ進むか」


 カズキの言葉と同時に船がフワリと浮き上がる。そして一気に高度を100メートル程上げると、物凄いスピードで船は動き出した。


「ぎゃああああああ!」

「ガタガタブルブル・・・・・・。ガタガタブルブル・・・・・・」

「アハハハハハハ!」

「モ˝ォオオオオオオ!」


 忽ち上がる悲鳴と歓声。そして断末魔。どうやら空にもモンスターがいたのだが、【アイギス】を使っているのを良い事に、カズキが容赦なく跳ね飛ばしたらしい。


「ミャー」

「グガランナ。レベル100000。何故か空を飛べる牛。そこそこ旨い」

「「確保ーーー!」」


 そして、そんな一瞬でも【食材鑑定】するクレアと、通訳をするカズキ。結果を聞いてテンション爆上げのアルフレッドとフローネ。中々にカオスな状況であった。


「妙だな」


 そんなドタバタな事がありつつ、一行がこの状況に慣れてきた頃。ポツリと呟いたカズキが不意に船を止めた。


「どうしたの?」


 そんなカズキの様子を不審に思ったのか、食事グガランナを終えて休んでいたエルザが近寄ってくる。他のメンバーがこの状況に慣れて緊張感を保てなくなっている中、未だに警戒心を抱いていたからこそ、カズキの様子に気付けたのだろう。


「うん。さっきから、同じ景色を何度も見ているような気がするんだ」


 カズキはそう言って船を降下させると、虚空から水が噴き出している場所へと移動した。


「・・・・・・確かにそっくだわ。これで川の中と終端まで同じだったら、同一の場所だと断定してもいいんじゃないかしら?」

「確かめてみよう」


 頷き合った二人は、再び川の始点から終点(始点と同様、いきなり川が終わる)までを軽くチェックする。その結果、罠のあった場所まで一致した事で、カズキの疑念が正しかったことが証明されたのだった。

お読みいただき有難うございました。

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