第百八十四話 はい論破
カズキ、エルザ、クリスの三人が第0コロニーへの入り口へと近づくと、『リントヴルム』とドラゴンのレリーフの中間あたりに光が発生した。
その光は上下に走り、床と天井に到達すると消えたが、異変はそれだけで終わらなかった。
光が走った跡には一筋の線が引かれており、そこから左右に開き始めたのだ。
「「「・・・・・・」」」
如何にもな演出に、期待を膨らませる五人。徐々に開いていく扉からは眩い光が放たれ、中の様子が窺えなかった。そんな事も、三人の期待に拍車をかける。
「「「・・・・・・おおっ!」」」
扉が完全に開くと光は収まった。代わりに現れたのは、黄金色の鱗を持った巨大なドラゴンである。その美しさに、五人は無意識のうちに感嘆の声を上げていた。
『良くぞ来た、大賢者カズキ。聖女エルザ。そして、剣帝クリスよ。我が名はエクレール。この世界では、竜神と呼ばれている者だ』
そんな三人の頭の中に、突然、声が鳴り響く。気配が動いた方を三人が見ると、体と同じ黄金色の瞳がカズキ達を睥睨していた。
「知っているようだが一応挨拶しておく。俺の名前はカズキ・スワだ」
カズキの挨拶を皮切りに、エルザ、クリスの順で挨拶すると、エクレールは偉そうに頷く。どうやら彼? も、人間を見下すタイプのドラゴンのようだった。
「聞きたい事があるんだが、いいか?」
挨拶が終わると、早速カズキが話を切り出す。
『勿論だ。何でも教えてやろう』
この世界と『リントヴルム』の関係や、何故、カズキ達の事を知っていたのか。そのような事を聞かれると思ったエクレールは、鷹揚に頷く。元々、彼らに協力させるために話そうと思っていたので、彼にとっては渡りに船だった。
「じゃあ『時間を操る魔法』について教えてくれ。どうすれば覚えられるのか。そして、俺にも覚えられるのか。俺が知りたいのは、その二つだけだ」
『・・・・・・はい?』
だから、カズキの想定外の質問に間の抜けた声を上げてしまったのは、仕方の無い事だったのだ。
「ん? 聞こえなかったか? 『時間を操る魔法』について――」
『いやいやいや! そうじゃなくて! もっと他に聞くことがあるだろう!』
どこまでもマイペースなカズキに、エクレールが声を荒げる。
「? これ以上に大事なことなんてないぞ?」
そんなエクレールに対し、カズキも真顔で応じた。猫が最優先のカズキにとって、『リントヴルム』はただの障害でしかない。勿論、猫の未来の為に駆除する気ではいるが、それは後でする事であって今ではないのだ。
『あるだろう! 何故、お前たちの事を知っているのかとか!』
「それは、今日という日の為にお前がハンターギルドを創ったからだろ? 証拠は、ギルドにあった魔道具だ。この世界の魔法やスキルの水準からすると、あの魔道具は異質だ。とても、人が創れるものじゃない。そうなると答えは一つだ。お前が、俺達を探す為にあの魔道具を創った。だから俺たちの事を知っていた。他にも証拠はある。この世界には存在しない、古代魔法がステータスに表示されたのがソレだ。ついでに言うと、込められている魔力の質も同じだしな」
『・・・・・・』
カズキの明快な答えに、エクレールが押し黙る。それを肯定と受け取ったカズキは、再び『時間を操る魔法』を教えるよう促す事にした。
「もういいだろ? わかったならサッサと――」
『ならば『リントヴルム』の事は気にならんのか!? 封印が不完全だった事とか! あちらの世界で封印されたのに、こちらの世界に現れた事とか!』
「封印が不完全だったのは、『リントヴルム』が悪魔でも食ってたからだろうな。だから、クロノスドラゴンの『時を止める魔法』に抵抗できた」
『ぐぬぬ』
図星を突かれたのか、今度は唸り声を上げるエクレール。だが、カズキの追撃は止まらない。
「こっちの世界に来たのは、『リントヴルム』が『門』を開いたからだろ。空中都市にあった『門』を喰らった事で、空間属性の魔法を身に着けていた『リントヴルム』は、魔法が完成する前に、魔力を回復させようと考えたんだ。こっちにはエサになる魔物が腐る程いるからな」
『グハッ!』
クリティカルを喰らい、血反吐を吐くエクレール。だがカズキは完全に屈服させないと『時間を操る魔法』を教えてくれないと思ったのか、ハイエルフやハイドワーフにまで言及する。
「ハイエルフとハイドワーフの役割は、巻き込まれてこの世界に来たあんたの保護だ。ハイドワーフがこの部屋、第0コロニーを創り、ハイエルフが【リジェネレート】を付与したんだろう。これだけの純度のミスリルを使ってるんだから、両者共に命懸けだろうな?」
『ヒッ!』
言葉と共に放たれたカズキの魔力に、エクレールが震えあがる。
「そのお陰であんたは、動けなくとも眠りにつく事を免れた。その後はさっき言った通りだ。【未来予知】を使って、この時代に俺たちが現れる事を知ったお前は、ハンターギルドを創った。そうだろ?」
『・・・・・・申し訳ありませんでしたっ!』
カズキの言葉に、エクレールは人の姿になって土下座した。
ハイエルフやハイドワーフを喰らって力をつけた事を看破された挙句、自分を遥かに超える魔力にビビったエクレールは、そうしないと自分が捕食される側に回ると気付いたのだ。
お読みいただき有難うございました。




