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第百四十六話 第二回定期試験 告示

 望みを掛けていたラウムドラゴンのエリアが全く役に立たなかった事で、カズキの時間を止める魔法の習得はお預けとなった。

 これに焦ったのはロイスである。何故なら、カズキたちが生きている間に『リントヴルム』が復活するかどうかが、不透明になったからだ。

 『クロノスドラゴン』のクロノが魔法を掛け、自分諸共に『リントヴルム』の時間を止めたのだが、ロイスによるとその魔法は不完全なのだという。

 『リントヴルム』は捕食した獲物の能力を使う事が出来るのだが、その捕食した相手の中に何故か悪魔が混ざっていた事で、クロノ程ではないが『リントヴルム』も時間を操る魔法を使えるようになっていたのだ。

 その結果、クロノの時間を止める魔法は『リントヴルム』の抵抗もあって不完全なものに終わり、二匹がいつの日か時の牢獄から解放される事が確実になってしまった。

 ロイスはそれを今の時代に持ってこようとしていたが、エリアが予想以上にボンクラだったせいで、その計画は脆くも崩れる。

 それも諦めきれないロイスは、自分の脚で『リントヴルム』を探すと言って何処かへと飛び去った。

 カズキ達が生きている間に見つけ出す事が出来なければ、未来で『リントヴルム』に捕食されるのは確実なので、ロイスも必死なのだ。




「試験?」

「うむ、一か月後に行われる、今年度二度目の試験だ。カズキにはその協力を頼みたい」


 ロイスに『リントヴルム』の捜索を任せる事にしたカズキのパーティメンバー達は、日常に戻って訓練や依頼にと忙しい日々を送っていた。


「協力? 俺が? ・・・・・・試験最後のラスボスでもすればいいのか?」


 そんな中、一人だけ別行動をとっていた(理由はお察しだ)カズキの許にジュリアンが現れた。理由は今語った通り、試験への協力である。


「何故そうなる。・・・・・・カズキに頼みたいのは、とあるマジックアイテムの作成。それも、一回限りで効力が失われるアイテムだ」

「へえ、面白そうじゃないか。で? 具体的にどんな効果を付ければいいんだ?」

「うむ。それは・・・・・・」


 ジュリアンの話に頷きながら、即興でマジックアイテムを創り出すカズキ。二人共、実にいい笑顔をしていた。


「あら、それならこうすればもっと面白いんじゃない?」

「いいわね。それならルールも少し弄って・・・・・・」


 そこへカズキとお茶をしていたソフィアとエルザも加わり、やがて四人が満足する出来のマジックアイテムが完成し、ついでに二度目の試験内容も決まった。

 試験内容は、三人一組のパーティを結成し、ダンジョンのあちこちに配置された、一つ十キロの金属の球体(カズキが圧縮した鉄塊)を集め、ゴールである闘技場に辿り着いた際に持っている球体の個数と、クリアタイムに応じて単位が入る(メンバーが一人でも欠けたら単位ゼロ)というものだった。




「・・・・・・ヤバい雰囲気がプンプンするね」


 学院の中を歩くと十メートルおきに目に入ってくるポスターと、同じ事が書かれているパーティ申請用紙を見て、ラクトが身震いした。


「はい。これまでの試験では、直前まで内容が明かされる事はありませんでした。ですが、今回は初めから試験の内容が明らかになっている。これは、試験までに準備をしておかなければクリア出来ないという事を言っているのかもしれません」


 ラクト同様に、申請用紙を手にしたマイネも同意する。


「パーティの編成も重要だな。出来れば早めに結成して、一か月後の本番までに連携を高めておきたい」

「ああ。出来れば気心が知れて、対等な実力を持った者で結成したいところだな。そうなると・・・・・・」


 コエンの言葉に頷いたエストが、その場にいるメンバーの数を数える。


「五人、ですね。カリム君がいれば話は早かったんですけど・・・・・・」


 同じく人数を数えたフローネが、残念そうに呟く。いくら実力があっても、カリムが学院に入学出来る年齢になるのは三年後。フローネとラクトが卒業した後だ。


「カズキは今回、教員側だからな。その事が余計に不安を煽っているんだが・・・・・・」

「「「「確かに・・・・・・」」」」


 コエンの言葉に、力なく同意を返すその他四名。

 今回の試験には参加しないと言った時の、カズキの楽しそうな表情が一同をより一層不安にさせていた。


「下手すると、Aランクの魔物がウジャウジャいるという事態にもなりかねません。このマジックアイテムの効果ならば、少なくとも死ぬ事はありませんから」


 それは申請用紙の裏にでかでかと書いてあった。

 曰く、『致命傷に至る攻撃を喰らうと自動的に障壁が張られ、死なない程度に回復させる治癒魔法が発動し、学院のダンジョンの外に自動的に転移するマジックアイテムを使用する』と。


「・・・・・・重ねてヤバいね。コレ、どう考えても殺しに来てるよ。マイネ先輩の懸念は間違いなく当たりだろうね」

「となると、それらの魔物にかち合わないようなルートを確立する必要がありますね。一度、ダンジョンの内部を探索してみませんか? 無数にある入り口全てを網羅するのは難しいですが、鉄球の奪い合いを考えると、共通のルートがある筈です。メンバー編成はその後で」

「「「「異議なし!」」」」


 フローネの言葉に力強く返事した一同は、それから一週間、人目を忍んでダンジョン内部の地図を作った。

 ジュリアン達が意図するところに気付けたのは、彼らだけだったという。

お読みいただきありがとうございました。

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