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第百十四話 激闘の終わり

 プランCが発動し、五人の戦士と二人の魔法使いによる後先考えない猛攻により、戦況は膠着していた。

 当然の話だが、カズキが古代魔法を使えば一瞬で終わる事は承知している。

 だが、体内の魔力を操る事により、これまでとは比較にならない速度で動けるようになった戦士たちは、五人がかりとはいえ、『剣帝』に匹敵する実力をもつカズキを相手にして、互角の戦いを演じているという事実に自信を深めていた。


「五分経過ぁー」


 その自信を木っ端みじんに打ち砕く出来事が起こったのは、模擬戦(仕切り直し)が始まってから五分経過し、カリムによる謎のアナウンスが流れた直後の事。


「【レーヴァテイン】」


 プランCが発動して以降、ジュリアンとソフィアの魔法を防ぐために魔法を使っていたカズキが、一転して攻撃に魔法を使った。それも、現代魔法で最強の威力を誇る、(簡易版)神話級の魔法を。


「「マズい!」」


 対象になったジュリアンとソフィアは、攻撃に向けていた意識を瞬時に切り替え、協力して魔法を防ごうと四重の氷の障壁を張るが、カズキの【レーヴァテイン】はその障壁をあっさりと蒸発させる。その余波だけで二人は吹き飛ばされ、意識を失った。

 余波とはいえ【レーヴァテイン】をその身に受けたのにそれだけで済んだのは、カズキの要請で防御魔法を使ったエルザのお陰である。


「突撃!」


 その隙を見逃さず、セバスチャンが号令を掛ける。ジュリアンとソフィアにカズキの意識が向いている内に畳みかけないと、何も出来ずに蹂躙されるのがオチだからだ。

 その判断は間違いではないが、それは相手が常識的な範囲での強敵の場合である。そしてカズキは、常識の埒外にいる、数少ない存在だった。


「「「「ぐっ!」」」」


 それまで防戦一方だったカズキが攻撃に移る。

 魔法を使う時にジュリアンとソフィアへ意識を向けたのは、五人の戦士を誘う為に敢えて晒した隙だったらしい。それにセバスチャンが気付いた時、今までとは段違いの速度で振るわれた剣が、三人の騎士団長とセバスチャンをまとめて弾き飛ばしていた。


「チッ!」


 返す刀でアルフレッドを狙ったカズキの斬撃は、交差させた二本の剣(包丁)で辛くも防がれる。


「おっ、流石はアルさん」

「何が流石だ! さっきまで手を抜いてやがった癖に!」

「心外だなぁ。ちゃんと全力でやってましたよ? ルールの範囲内で、ですけど」

「ルール? カリムの妙な言葉の事かっ!」


 のんびりとした言葉使いとは裏腹に、目にも留まらぬ速度で繰り出されるカズキの斬撃を、両手の包丁を使って必死で捌くアルフレッドの姿に、観客達から感嘆の声が上がった。


()()()()()()()した二段階目のカズキのスピードに付いていけるとは・・・・・・。流石は『双剣』のアルフレッド」

「私達では五分も持ちませんからね」

「そこは世界最強の軍事力を誇るランスリードの面目躍如だな。いい人材が揃っているからこそ、カズキ相手に食い下がれるのだろう」

「なん・・・・・・だと?」


 観客の言葉に愕然としたのは、咄嗟に翳した剣での防御が間に合い、比較的ダメージが少なかったセバスチャンだった。

 それも無理はない。魔力操作を覚えた事で、やっとカズキやクリスの背中が見えてきたと思っていたら、目標としていた当のカズキは、素の身体能力だけで戦っていたというのだから。


「・・・・・・だが、ここで諦める訳にはいかん。やれるな? お前たち」

「「「当然です!」」」


 セバスチャン同様にショックを受けていた騎士団長たちが、痛みを堪えて立ち上がる。

 彼等はセバスチャンとは違い、カズキの一撃をまともに喰らったのだが、まだ年若い観客たちが、カズキとの実力差に絶望することなく挑み続けているのに、たった一回戦っただけの自分達が諦める訳にはいかないという意地で、無理矢理に体を起こしたのだ。


「その意気や良し! では征くぞっ!」

「「「応っ!」」」


 セバスチャンの号令のもと、再度カズキへと突撃を敢行する四人。

 不思議な事に、その動きは今までで一番早く、鋭かった。


「魔力操作をモノにしつつあるのか。なら・・・・・・」


 ダメージと極度の疲労を感じている体で、今まで以上の速度と力で攻撃を加えてくる五人の姿に、カズキが尊敬の表情を浮かべる(余談だが、カズキがセバスチャンに敬意を抱いたのは、これが初めてであった)。そして・・・・・。


「ちょっと早いけど三段階目だ」


 その言葉と共に更に上がったスピードで、五人の意識を一瞬にして刈り取った。

読んで下さってありがとうございます。

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