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第百十話 カズキが見ている世界

 カズキとアルフレッドがシーサペントの調理をしている頃、魔の海域にある『門』を通って異世界から帰還を果たした一行は、彼らの直前に『門』を通ってしまったヒュドラを滅ぼす事に成功していた。


「とりあえず一匹か。だが、『門』の周辺に集まっていたヒュドラの数を考えると、他にもこちらの世界に来ている可能性が高い。さて、どうやって探すか・・・・・・」


 悩んでいるジュリアンに、エルザが不思議そうな顔で問いかけた。


「魔法は?」

「もうやっている。だが、私たちでは精々十キロまでの距離しか探知できないんだ。賭けになるが、一番近い人里を目指しながら・・・・・・」

「そうじゃなくって、マジックアイテムの方。カズキがこの船なら対応できるって言ったんだから、きっとレーダーだって更新してると思うわよ?」

「・・・・・・なるほど」


 言われてみればもっともな話だった。

 あのカズキが、『門』を通り抜けた魔物が複数いる可能性を想定していない筈がない。後先考えないバカ(クリス)とは違うのだ。


「っ!」


 エルザの助言に従って、ジュリアンが『真・アーネスト号EXレーダー』(相変わらず、そのまんまな名前だった)を起動すると、激しい頭痛に襲われた。

 

「エルザ!」


 突然その場に蹲り、頭を抑えて呻きだしたジュリアンの(ただ)ならぬ様子に、次にマジックアイテムを起動しようとしていたソフィアが、慌ててエルザを呼んだ。

 

「・・・・・・大丈夫です。色々な情報が一度に押し寄せてきたせいで、頭がショートしただけですから」


 大丈夫という言葉に嘘はないと言わんばかりに、勢いよく立ち上がって見せたジュリアンだったが、またすぐにふらついて、甲板に座り込んでしまった。


「全然大丈夫じゃなそうなんだけど」


 そう言いながらジト目のエルザが魔法を使おうとするが、やはりジュリアンは首を振った。


「必要ない。それよりも、この世界に来たヒュドラの居場所がわかった。数は三で、いずれもここから一番近い小さな漁村を目指している。南に百キロの距離だ」

「了解だ!」


 返事をしたアーネストが、ジュリアンの言葉通りに針路を南へと向ける。


「ここから百キロの距離にいるヒュドラをピンポイントで探せるなんて、流石はカズキ謹製のマジックアイテムね。それで? あなたがそんな状態に陥るって事は、相当遠い場所まで探知しちゃったんでしょう? 千キロ? それとも二千キロくらいかしら?」


 好奇心丸出しでジュリアンに詰め寄るソフィア。今にも自分で使ってみると言い出しそうな空気を醸し出していた。


「・・・・・・違います」

「え? もっと? じゃあ思い切って、五千キロとか!?」


 ()()()()の覚悟で起動しては、自分の二の舞になる事は明白なので、ジュリアンは自重を止めたカズキが創り出したマジックアイテムの危険性を説明する事にした。


「そんな生易しいものではありません。私が起動した時に見たのは・・・・・・」

「見たのは?」

()()です」

「・・・・・・え? 私の聞き間違いかしら。申し訳ないんだけど、もう一度言って貰える?」


 同じ言葉を聞かされたら、自分もソフィアと同じ反応をする自信があるジュリアンは、求めに応じてもう一度同じ言葉を繰り返した。


「世界です。世界中に散らばっている魔物や動物、人の居場所が、一瞬にして押し寄せて来るんです」

「「「「「「・・・・・・」」」」」」


 想像以上に意味がわからない事を言われて、近くで聞き耳を立てていた、アーネスト以外のメンバーも沈黙した。


「ヒャッハー! 汚物(ヒュドラ)は消毒だーーーーーーーー!」


 そんな深刻な空気を吹き飛ばすかのように、アルフレッドが雄叫び? を上げる。

 見れば、いつの間にかヒュドラに追いついていた『真・アーネスト号EX』が、【レーヴァテイン】によって一匹目を屠り、続けて二匹目、三匹目の獲物を仕留めようと、更に加速するところだった。


「・・・・・・えーと。何の話をしていたんだっけ?」


 三匹目のヒュドラが灰になり、目的を果たした船が停止したところでソフィアが我に返った。


「カズキが異常って話じゃなかった?」

「・・・・・・そんな話をしていたわけではないが、何故か本質をついている気がするな」


 エルザの言葉を否定しようとしたジュリアンだったが、あながち間違った事を言っている訳ではないと、妙に納得してしまう。


「マジックアイテムで性能が劣化していてさえ、私は激しい頭痛に見舞われた。そのオリジナルの魔法を当然のように使いこなしているカズキには、この世界で起こっている事全てを見通す力があるのかもしれないな・・・・・・」


 悪魔の王がカズキを見て神と言ったのも、あながち間違いではないのかもしれない。そんな事を考えながら、ジュリアンは意識を手放した。

読んで下さってありがとうございます。

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