懇願
吉佐倉さん達がそうやって何とか日々を過ごしている間、僕はひたすら周囲を見回り、使えそうなものがあれば彼女達のところへと持ち帰った。
だけどこの時にはもう、それはあくまで<ついで>でしかなかったのも、正直なところだったんだけどね。
僕が周囲を見回っていた一番の理由……
一方、吉佐倉さんは日を追うごとにやつれていくのが目に見えて分かった。
「ママ、だいじょうぶ…?」
みほちゃんが思わずそう尋ねてしまうくらいには。
「ああ、うん。大丈夫よ。ちょっと疲れてるだけだから」
吉佐倉さんはそう応えるけれど、とても大丈夫そうには見えない。
そんな彼女を心配していたのは、もちろんみほちゃんだけじゃなかった。エレーンさんもそうだし、シェリーちゃんもそうだった。
「アヤノ、ヤスンデ」
片言の日本語で、シェリーちゃんがそう声を掛けた。エレーンさんに教えてもらったものだった。
「ありがとう。でも大丈夫だから……」
そう応えた吉佐倉さんに、シェリーちゃんは泣きそうな顔で首を横に振った。
「大丈夫じゃない…! 大丈夫じゃないよ……! だから休んで、お願い……!」
縋るように英語でそう言ったのが、彼女にも分かった。決して英語が堪能といういうわけじゃなくても、その程度なら吉佐倉さんにも理解できた。
「シェリー……」
目に涙をいっぱいに溜めて必死に訴えかけてくるシェリーちゃんに、吉佐倉さんは戸惑いながらもほわりとした気持ちを感じていた。あどけない真っ直ぐな優しさが沁みる。
シェリーちゃんは言った。
「今のシェリーのママは、ホントのママじゃない。ホントのママは、私が小さい頃に死んじゃった。
ママも『大丈夫』って言ってた。いっつもいっつも言ってた。でも大丈夫じゃなかった! パパは優しかったけど仕事ちゃんとしなくて、ママがいっぱい働いてて、だけど『大丈夫』って言ってた……
アヤノ、休んで! お願いだから休んで…! でないと死んじゃう…! ホントのママみたいにならないで……!」
と、必死で懇願した。これ以上、自分の周りで誰かが死ぬのを見たくなかったからっていうのが伝わってくる。
そんなシェリーちゃんの<想い>が吉佐倉さんを包み込んでいくのが見えた。だから根負けするみたいにして、
「……分かった……じゃあ、休ませてもらうね」
って言って吉佐倉さんは横になった。それを見て、みほちゃんとエレーンさんとシェリーちゃんはホッとした。
でも、実は、吉佐倉さんは、体はそれほど疲れていなかった。むしろ頭がさえてしまって深く眠れない状態が続いていただけだった。
ストレスが原因だったから……




