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日記

どうやらみほちゃんにとっては、ずっと以前からこういう生活を続けてて、これが当たり前ということになってるんだろうな。


それが逆に辛かったけれど、吉佐倉よざくらさん達はその気持ちを表に出すことなく、


「そう、よかったね♡」


と笑顔を見せた。




そんな生活を続けているうちに、三日目くらいにようやく自分から起き上がって自分のことをし始めたアリーネさんが、自分で拾ってきたキャンプ用のテントを使って<個室>を作って、吉佐倉さん達とはあまり関わらないようにしながら一人で生活を始めた。


不様な今の自分の姿を見られたくなかったみたいだ。彼女の中でいろいろな感情や思考が渦巻いてるのが、今の僕には分かってしまう。


クォ=ヨ=ムイにまんまと騙されたこと。自分の力が何一つ通用しないこと。情けない悲鳴を上げて失禁したこと。


<敬虔なる主の徒>たる自分が邪神とその眷属を相手にそんな有り様だったことで、彼女の根幹部分が液状化現象を起こした地面のようにグズグズになってるんだ。


そういう様子も、僕はただ黙って見守る。


すると、四日目から、吉佐倉さんが、僕が拾ってきたノートとボールペンで日記を書き始めたのが分かった。


もちろん、僕は、テントの中までは覗き込まない。だけど分かるんだ。彼女が文字に乗せている<意図>が伝わってくることで。




『四日目。今日から日記をつけることにした。


生活面ではあの黒い獣が必要なものを持ってきてくれるので特に困ったことはない。もちろん以前のと比べれば不便にはなったけど、みほちゃんもシェリーもエレーンも辛そうにしてないから気が楽だ。


だけど、全然、救助とかが来る気配がない。消防車や救急車やパトカーのサイレンの音も全くしない。見渡す限り瓦礫の山で、動くものさえ見えない。


被害はどれくらいなんだろう。まさか日本全部がこんなことになってるとは思わないけど、少なくともこの辺りはまともな救助活動もできない状態なんだろうなというのは覚悟した方がいいのかもしれない』




『五日目。最初の日から降り出した泥の雨は三日目にはやんだけど、今度は日差しが強くてちょっと大変。扇風機すらないから夜もよく眠れない。


と思ってたら、黒い獣が発電機と冷蔵庫と冷風機を持ってきた。これで電気が使える。


だけど今度は発電機の音が五月蠅くてちょっと憂鬱。止めると冷風機も使えないから止めることもできないし』




『六日目。遠くの方で煙が上がってるのが見えた。火事だろうか。燃え広がると大変だな。ここら辺は大丈夫だろうか。


みほちゃんは相変わらず私のことをママと呼ぶ。今の生活を普通だとも思ってるみたいだし。


だけど本当のことを思い出すときっとショックを受けるだろうから、いっそこのままの方がいいのかなとも思う』




『七日目。また雨が降り出した。救助活動が行われてる気配はやっぱりない。それどころか生きてる人の姿も見ない。私達以外はダメだったんだろうか。


そう思いたくはないけど。


アリーネさんは私達とは顔も合わせようとしないで一人で勝手にやってるみたい。まあ、軍人だから自分で何とかできるのか』




等々。


だけど、本当はもっといろいろ書きたいと思ってるみたいだ。だけどそうするとただただ恨み言ばかりを書き連ねることになるから控えてるのが伝わってきたのだった。



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