変化
自分が心まで怪物になっていくのを感じながらも、僕はまだ、
『助けなきゃ』
とは思うことができた。だから今はただ、淡々と自分にできることをするだけだと思った。
強引に瓦礫の隙間に体を捻じ込んで、ぐいと体を起こして瓦礫を押しのけて隙間を作り、崩れてきそうなそれは触角で弾き飛ばして地上に上がれるルートを確保すると、僕はもう、中の人間達の確認をすることなく次へと移動した。
自分の姿を見せると不安がられるかもしれないと考えたから。それに、僕は医者じゃない。怪我とかしてる人がいても治療なんてできないし。
……いや、違うな……
そんなの、僅かに残った僕の人間の部分が体裁を整えるために作りだしたただの<言い訳>だ。
本当は、どうでもよかったんだ。『助けなきゃ』と思いながらも、
『助かっても助からなくても、どうでもいいや……』
って思ってたんだ。
それでも、ただの上辺だけでも、『助けなきゃ』と思えてる間は、そうしようとも考えた。だから人間の声が聞こえるとそこに行って瓦礫を押しのけて、地上に上がれるルートを作ったりした。
すごく頑丈な地下の、浅いところは衝撃波が伝わってみんな死んだみたいだけど、深いところにいた人達のところまでは衝撃波は届かなかったり弱ってたりして、助かった人もいたみたいだ。
なんてことをしているうちに、数百人単位の人間の生存が確認できた。
だけど僕にはもうどうでもよかった。どんどんどんどんそう思えてくる。
そして、何回目かのそれが終わって、助けを呼ぶ声が聞こえても、僕はそちらに向かう気にはなれなかった。僕が手を貸さなくても助かる時は助かるだろうし、そうじゃなければ死ぬだけだ。
『……死ぬのなんて、大したことじゃないし……』
そんなことも思ってしまう。
『僕だって死んだのに、こうして生き返らされた。生き返らされなくても、<量子情報体>とか言うのになって、意識だけで存在し続けるらしいじゃないか……
くだらないよ……』
でも、吉佐倉さん達のことだけは放ってはおけなかった。
彼女達がいた公園跡に戻ると、既にお風呂から上がって一息ついているところだった。
みほちゃんも気が付いたみたいだ。
けれど……
「ママ、きょうはあめがいっぱいだね」
と、頭を拭かれながら吉佐倉さんに話しかけていた。
『……まさか、記憶が……?』
その様子を見ただけで、僕は察してしまった。
幼いみほちゃんは、このあまりの出来事を受け止め切れなくて、帳尻を合わせるために自身の記憶を都合のいいように書き換えてしまったのだと。




