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『風呂を用意した。体も汚れただろうし、きれいにしてくれたらいい。着替えも用意した』


お風呂を用意した僕は、吉佐倉よざくらさん達のテントに、ショッピングセンター跡で回収してビニール袋に詰めた衣服とメッセージを置いた。


そして僕自身は、さらにもう一つ、同じような小屋を建てた。


最初に建てたのがリビング、次が浴室、そしてこれが寝室のつもりだった。


寝室については、時間的な余裕もあったから、これまで以上に丁寧に作る。雨漏りとかがしないように、ちょっとしたことで崩れたりしないように、しっかりと。


その上で床には何重にも毛布を敷いて、寝心地を確保した。自分でも横になってみて、十分なクッションがあるのを確認する。


ただ、今の僕の体は、瓦礫の中に潜り込んで尖ったコンクリートや飛び出した鉄筋、割れたガラスとかに当たっても痛くも痒くもなかったから、痛いかどうかじゃ判断できないと思って、とにかくクッション性で判断するようにした。


また、必要な材料を集めている間、僕は数えきれないくらいの遺体を見た。しかも、ぱっと見じゃ人間とは分からないような酷い状態の。


なのに、それを見た僕は、不思議と取り乱したりしなかった。ちょっと胸がざわつくような感じはするのに、それ以上は何もなかった。


痛くも、苦しくも、悲しくもない。


元々、自分が薄情な人間だとは分かってた。だけど、ネットで悲惨な状態の遺体の写真とかを見た時に何とも言えない気分になってたのが今はもうない。


だから実感したんだ。


『ああ…僕はもう、人間じゃないんだな……』


って。しかも、そんな風に考えても、なんにも感じない。動揺もしないし、不安も感じない。明らかに人間のメンタルじゃない。


だけどその時、僕の触角みみが何かを捉えるのが分かった。


『人間の…声……?』


これほどまで徹底的に破壊されて、一つとして人の姿をとどめていた死体がないような状況で生き延びている人間がいるのかと思ったけど、声のする方に行ってみると、理由が分かった。


地下だ。瓦礫で出入り口を塞がれた地下空間に生存者がいたんだ。


でも、それを知っても僕の胸にはさほど高揚感も湧いてこなかった。


『生きてる人間がいて良かったーっ!』


とか思わない。


『へえ、すごいな…』


としか頭によぎらない。


その反面、体を動かせば動かすほど、自身のメンタルが今の体の影響を受けて変化していくのが分かる。


『何も感じない……


僕は……心まで怪物になっていくのか……』



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