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黒迅の牙獣

アリーネさんが構えた拳銃から放たれた弾丸を、僕は容易く口で捉えることができた。しかも、火薬の爆発で撃ち出された弾丸は相当熱くなってるはずなのに、まったくそれも感じなかった。


まるで、投げ上げたポップコーンでも咥えたみたいな呆気なさ。


いや、それもそうだけど、拳銃の弾丸をしっかりと視界に捉えてそれを口に咥えられてしまう僕の動きもおかしい。


『加速されてる訳じゃなさそうなのに……!?


これが、今の僕の力……?』


クォ=ヨ=ムイは<犬>と言ってたけど、明らかに犬じゃない、何か超常の存在。


地面に降り立って、口に含んだものを吐き出す。


それを見たアリーネさんは、


「Shiiiiiiiit!!!」


と毒づきながらまた引き金を引いた。立て続けに何度も。


だけど僕は、そうやって放たれた弾丸すべてを口に咥えて止めてみせた。二百万倍に加速されていた時みたいに止まって見えるほどじゃなくても、スローモーションのようにゆっくり飛んでるように見えたんだ。しかも、


「Fuck off dude!!」


意味まではよく分からないけど、アリーネさんがなんて言ってるのかも聞き取れてしまう。


「Damn it!!」


銃弾を打ち尽くし、弾倉を交換しようとするアリーネさんの動きに至ってはそれこそ止まって見える。


だからスッと近付いて、手にしてた弾倉を咥えて奪い取った。こうやって少し動いただけで、自分の体の動き方も理解できてきた。


「What!?」


唖然とするアリーネさんの後ろでは、みほちゃんを抱いてシェリーちゃんとエレーンさんを庇うように立つ吉佐倉よざくらさんが僕を睨み付けていた。完全に敵を見る目だと思った。


悲しかったけれど、今の僕のこの姿と行動を見れば、その反応も当然だと思う。


ただ、僕は、現実問題として勝てる筈のない相手に攻撃を加えるなんて無謀なことをして、せっかく助かった命を無駄にしてほしくなかっただけなんだけど……


「………!!!」


もう、聞くに堪えない罵詈雑言を並べるアリーネさんも、吉佐倉よざくらさん達を庇うように位置を取り直す。


頭に血が上ってるように見えて体が無意識のうちにそんな風に動く感じかもしれない。さすがは職業軍人ってことなのかな。


その時、僕の後ろで「くくく…」と噛み殺したような笑い声が聞こえてきた。クォ=ヨ=ムイだ。


「いやはや、実に楽しいな。私のペットも本当に優秀だ。せっかく助かった命を無駄にするのはよせ。あいつがお前達を助けるようにと私に懇願したのだ。それを蔑ろにする気か?」


「!?」


クォ=ヨ=ムイの言葉を耳にして、吉佐倉よざくらさんがハッとなったのだった。



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