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ただの余興

『あの女達は、自分達が起こした衝撃波が荒れ狂うただなかに放り出されるんだ』


クォ=ヨ=ムイのその言葉を耳にした瞬間、僕は、胃をギュウッと鷲掴みにされたような感じになって、吐きそうになった。と言っても、実際には吐けなかったけど。生身の肉体じゃないからってことなのかな。


じゃない! 今はそれどころじゃないんだ!


「なんで…! なんで彼女達がそんな目に遭わないといけないんですか!? あなたはどこまで人間を弄ぶ気ですか!?」


言っても無駄なのは分かってても、言わずにはいられなかった。勝手に言葉が溢れ出てしまった。


そんな僕に、クォ=ヨ=ムイは唇を吊り上げて邪悪以外の何ものでもない笑みを浮かべて言う。


「なぜ? だと? それを問うてどうする。私はお前達が<邪神>とか呼ぶ存在だぞ? お前達にとって都合の良い返答が返ってくる訳がなかろうが。


だが、それでも答えてやろう。


ただの余興だよ。


それ以外の何ものでもない」


分かってはいたけど、それでも有り得ない返答に頭がおかしくなりそうだった。僕達の感覚で二十日程一緒にいただけとはいえ、家族とでさえ体験できないような経験をしてきた<仲間>なんだ。もう全く見ず知らずの人じゃない。ましてや動くこともままならなくなった僕の面倒も少なからず見てくれた人達だ。


それが、どうして……


なのにクォ=ヨ=ムイはさらに言う。


「こんな無駄話をしている間にも百秒過ぎてしまったぞ。残り百秒であの女達は死ぬ。それこそ、人間であったかどうかすら見ただけでは分からぬ肉片に成り果ててな。


で、私から一つ提案がある」


ニヤニヤと笑いながら<提案>なんて口にするクォ=ヨ=ムイに嫌悪感しか覚えないけれど、吉佐倉よざくらさん達を救うヒントが少しでもあればと考えて、


「…何ですか…?」


と、耳を傾けてしまった。


するとクォ=ヨ=ムイは、さらに悪鬼のような笑みを浮かべながら、言ったんだ。


「お前、私の<犬>になれ」


「…え?」


「犬になれと言ったんだ。私の<飼い犬>にな。迷ってる暇はないぞ。あと五十秒だ」


「…ぐ……」


犬に…だと……?


しかも、詳しい説明を聞く時間も迷う時間も与えてもらえないのか……!


犬…犬……? どういうことだ……? 何かの比喩か? それとも本当に……?


「さあ、あと二十秒だ」


「―――――くそっ! 分かりました! なります! 犬になります!! だから彼女達を助けてください!!」


僕がそう答えた瞬間、クォ=ヨ=ムイは満面の笑みを浮かべて、


「よかろう、お前の望みを聞き入れてやろう」


と言ったのだった。



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