アリーネ・エンデ・カシキの嘆息 その4
市民と区別がつけられないテロリストに占拠された学校に対してどうあるべきか、基本的な部分ではもちろん想定はされています。『テロリストと交渉はしない』『テロリストは徹底的に叩くべき』ということです。
しかし、テロリストを叩く為の方法については、当然、その時その時の状況によって変わってきます。その方法論において、『どの程度まで市民の犠牲を許容するか』という点で意見が分かれたとも言えるでしょう。
『極力、市民の被害は出さない』と考える者と、
『たとえどれだけの被害が出ようともテロリストは殲滅すべき』と考える者です。
本音を言えば私は後者の意見の立場でした。ここでテロリストを逃せば新たな被害が出る。だから殲滅すべきだと。
ですが、待てど暮らせど命令が届きません。そうこうしているうちに、私達の部隊の中にもその状況に焦れ始めるものが出ました。部隊の中でも特に強硬な対応を主張していた仲間の一人が、待機命令を無視して強行突入してしまったのです。
私ももう少し時間が伸びていれば率先して行動を起こしてしまっていたかもしれませんが、この時はあくまで、命令を無視して突入してしまった仲間のフォローの為に続いて突入したのでした。
当然、学校内で激しい戦闘になり、子供を含めた多くの犠牲者を出しつつも、少しでも怪しい動きをした者は容赦なく撃つことで、テロリストの殲滅に成功しました。
この時、犠牲になったのは教師をはじめとした大人七人と、ブルカと呼ばれる全身を覆う衣装に身を包み、テロリストと区別がつかなかった上にこちらの指示を無視して勝手に逃げ出そうとしたりして撃たれた女子生徒を中心とした子供十七人の計二十四人でした。
それでもテロリストの殲滅には成功したのですから、私は<やむを得ない犠牲>と割り切っていたのです。
なのに、子供が巻き添えになったことで錯乱した親が、隠し持っていた拳銃で、私の部隊の仲間を撃つという事態に……
その親は、テロリストでもなければテロリストと繋がりのある人物でもなかったそうです。ですが、数十発の銃弾を受けて倒れた我が子の姿を見た瞬間に、テロリストと化したのでした。
結果として、私の部隊の仲間二人がその銃弾を受けて死亡。かつ、命令を無視し勝手に攻撃を行ったということで私が所属していた部隊は解散。初めからそんな部隊は存在しなかったことにされてしまいました。
多数の子供の犠牲者を出したことで世間の批判を恐れた上層部が、『所属不明の集団によって勝手に行われた戦闘』という風にしてしまったということです、




