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吉佐倉綾乃の独白 その5

生活の全てを依存していた叔父を亡くした時の、義理の叔母と従妹の絶望に満ちた顔。


それを見て溜飲が下がったと感じていた自分。


そんな自分が酷くあさましく思えて、私は愕然となった。


『これじゃ、あの男と同じじゃない……』


他人を見下し、自分以外の人間が懊悩するのを嘲笑うあの男と……


神河内かみこうちさんは、私が単純に癌で亡くなった人とその遺族を見てたから同情的な気持ちになってるんだと思ってるみたいだけど、それは違う。本当はもっとどろどろとした陰惨な感情なんだ。


だからきっと、神河内さんも投げやりな気持ちになって自分の欲求に従ってるだけなんじゃないかっていう目で見てたことは否めない。


だけど彼は、確かに決して善人ではないんだろうけど、ただ死を前にして自棄を起こしてるんじゃないってことだけは分かった。だから少しだけ印象が変わってきたていうのもある。


もちろんハーレムなんてお断りなのは変わらなくても、赤いような緑色のような得体のしれない液体を苦し気に吐く叔父の姿にただオロオロしてただけの義理の叔母や従妹のようにはなりたくないとは思った。


それでも、冷静ではいられない。神河内さんが人として恥ずかしくないようにあろうとするほど、逆に私は彼に対して苛立ちさえ覚えた。


『もっと、我儘になっていいんじゃないですか!?』


って思ってしまって。自分が死ぬかもしれないという時に『人として恥ずかしくないようになんてそんな綺麗事…!』って感じてしまって。


おかしいな。叔父が亡くなった時の義理の叔母や従妹のうろたえぶりを心のどこかで嘲笑ってたのに、いざ神河内さんみたいな態度をとられると、それはそれで苦しいなんて。


人間がどれほど矛盾した生き物なのか、私は、分かってるようでいて本当は分かってなかったんだと思い知らされる。


でももう今ははっきり言える。


「神河内さん、もっと甘えてください。我儘になってくれていいんです。そんなに苦しいのにどうしてその上我慢しようとするんですか。甘えて泣き言をこぼして私に当たり散らすくらいに素直になったらいいんじゃないですか? あなたはよく頑張ったと思います。それどころが頑張り過ぎです。そこまで我慢したのなら、後は楽にしていいんじゃないですか……!?」


なのに彼は、少し苦笑いを浮かべて首を横に振る。


「…ありがとう……そう言ってくれるのは嬉しいけど、もう我儘を言うのに気力を割くのもきついんだ。僕は別に我慢してるんじゃないよ。そうしたいからしてるだけなんだ……」



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