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優先順位

吉佐倉よざくらさんもアリーネさんも怒ってくれるけど、僕はむしろ、クォ=ヨ=ムイにしてはありえないくらいの譲歩だというのが正直な印象だった。だって、百匹も認めてくれたんだよ? あの流れだったら即刻反故にされても不思議じゃなかったのに、まさかそんな条件にしてくれるなんて。


だから、


「吉佐倉さんもアリーネさんも、やめてください! 僕はそれでいいです! 条件を受け入れます!」


と断言した。


「そんな…!」


吉佐倉さんは目を潤ませて怒った顔で、アリーネさんは「Fuck!!」と不満顔で、僕を見てた。


「たとえ百匹でも、今の僕にとってはすごくありがたいです。よろしくお願いします。アリーネさん」


「日本人というのはどうしてこうお人好しなんデスか? 損したとは思わないんデスか?」


「アリーネさん。アメリカ人のあなたには理解できないでしょうけど、日本には『損して得取れ』って考え方もあるんです。これは日本人としての僕のメンタリティの問題だ。あなたの思う損得とは関係ないです。とにかく僕はそれでいい。


とにかく今は時間が惜しい。こうやって揉めてる間にも時間は過ぎるんです。交渉は後にしてください。今は目の前の事態を何とかするのが先でしょう? 軍人のあなたなら分かる筈だ。タスクの優先順位というやつですよ」


「…了解。それでいいでショウ。確かに事態は切迫してまス。話し合いは後回しデスね」


そして僕は、次の場所に<移動>した。


「ヘルシンキ? フィンランドデスね」


そこは、朝の駅のホームらしかった。アリーネさんは案内板を見てすぐに分かったらしい。観光で来たことあるって。


だけどそこでも、既に犠牲者は出てた。とにかく急いで深刻な状態のところから優先的に片付けていく。


それから五ヶ所、連続で回った。


でもその時、吉佐倉さんのスマホのアラームが鳴る。


「そろそろ時間かも」


彼女の声に、僕も、


「今のところはこのくらいにしておきましょう。みほちゃんがそろそろ起きるかもしれない」


そう言ってすぐ、みほちゃんが寝てる銀行のロビーへと戻った。


「良かった…」


見ればみほちゃんはまだソファーで寝てた。子供だから睡眠が深いんだろう。目が覚めて一人だったらきっと怖がる。しばらく休憩して、みほちゃんが起きたら改めて一緒に行こう。


「なんデスか? こんな小さな子を一人にしてたんデスか? アメリカなら即、児童虐待で逮捕デスよ。まったく日本人の危機意識のなさには呆れまス…!」


と、一人でプリプリ怒ってた。


確かに僕も一人にしておくのは不安だったけど、今の状況だと僕達以外は誰も動けないからむしろメチャクチャ安全だとも思えるかな。



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