三人目
正直、今の僕の命が二百万秒残ってるのだとしても、果たしてそのうちどれくらい、こうして立ち上がって動けるのかという点ではまったく分からない。下手をすれば数日中にも起き上がることさえできなくなる可能性がある。
それを思えば、あまりのんびりはしてられなかった。体が動くうちに、やれるところまでやらなくちゃ。せめて、既に<手遅れ>になってる分だけでも、僕が片付けたい。
だからみほちゃんが眠ってる間にも、僕は吉佐倉さんと一緒に、怪物を始末して回った。
と、その中で、ロンドンらしいところで怪物を始末した時に、既に手遅れになってしまってた犠牲者達の中で、辛うじて無事な若い白人女性がいた。
「ようやく三人目、と」
クォ=ヨ=ムイが嬉しそうに言いながらパチンと指を鳴らす。
するとその女性は、
「Oh! My God!!」
と声を上げた。でも次の瞬間、
「これはナニゴトでスか!?」
って、片言だけど確かに日本語でそう僕達に訊いてきた。僕達が日本人だと思ったということだった。
女性の名前は、アリーネ・エンデ・カシキ。日本人女性を父方の祖母に、アメリカ人男性を同じく父方の祖父に、ドイツ人女性を母方の祖母に、イギリス人男性を母方の祖父に持つという、国際色豊かなアメリカ人女性で、現在、アメリカ軍グアム基地所属の海兵隊員だった。休暇中に祖父の実家を訪ねてきて、駅から出たところで事件に巻き込まれたらしい。
なんだこの盛り過ぎ属性は?
でも、そんなことはさて置いて、事情を説明すると、さすがに現役のアメリカ海兵隊ということで、
「Fuck! 何でスかそれは!? このような人類の危急存亡の事態にあって何を呑気なことをしているのデスか!? これだから日本人は!!」
だって。
「このような事態こそ我々軍人の役目デス! 民間人は大人しくしてナさい!!」
と、いささか尊大とも言える態度でそう言ってのけた。
だけど、
「あ~……悪いがそういう訳にもいかんなあ。元気なのはいいが、お前、どうも私の趣味に合わん。だからお前にはやらせん。引っ込んでろ」
とかなんとか、クォ=ヨ=ムイが酷く不機嫌そうな表情で言った。
『うわ…! これはヤバいやつだ……!』
取り敢えずここまでクォ=ヨ=ムイのことを見てきて、彼女はどうやら、自分と同じように尊大なタイプには厳しいということが感じられてきた。そういう意味では、アリーネさんは一番マズいタイプなのではないかと……
「なんでスか!? アナタ、我がアメリカ海兵隊にケンカでも売るというのでスか!?」
まったく臆することなく噛み付くアリーネさんに、クォ=ヨ=ムイの目がギラリと不穏な光を放つ。
「あ”? 貴様、第七艦隊ごとこの地球上から消し去ってやろうか……!?」




