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デュアルピース  作者: 眠気 愛
第一章 夜猫
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第三話

 俺達は学校へ入って教室内へと入ると、黒板にでかでかと。

[緊急朝礼があるので体育館に来ること。8:00~]

 と、書かれてあった。教室内にはカバンはあるにもかかわらず誰もいない事を確認するとほとんどがもう体育館へと直行したらしい。


「マズイ。俺らもさっさと行こうぜ尋人」

「ああ。そうだな」


 チラッと時計を確認するともう七時五十八分を差している。校内が広いせいで二分以内でつけるかどうか心配だが、俺はさっさとカバンを置いて体育館へと直行した。

 廊下を走っていると、後ろから「走るなぁ!」と言うやつの声が聞こえたので曲がり角を曲がるまでは歩いてその後は再び全速力で走って行った。

 俺達が体育館にやってくると、もう朝礼は始まっており、扉の前に居た先生に怒られながらも中へと入った。体育館はとても広く、全校生徒が集まっている。今は四つずつ横に椅子が感覚を開けながら並べられている。これは全て機械で行う事ができ、体育館などで行事がある時は床が開いて椅子が下から出た後に床だけ閉まるのだ。


「――であるからして、今後の活動にも私は期待している。そして――」


 尚樹と一緒にイスに座ると隣から声をかけられた。


「何だ尋人。遅刻か?」


 黒髪ロングの髪を一つに束ね、ふりふり揺れるポニーテールにキリッとしたきつめの瞳。出るところは出て、きゅっとしまっているそこそこナイスバディであり女子にしては背も高い人物。(たちばな)蓬華(ほうか)

 幼い頃から俺ともう一人と一緒に矢吹道場で剣術を学んできた彼女。今では全国大会優勝したこともあるほどの強者(つわもの)であるのだが、なぜか優勝を誇らない。マスコミによられても私の中ではまだ優勝していないと宣言しており、更なる高みへ登ろうとしているなんてのが世間一般の知識だ。


「いやいや、あと数分ってところで教室ついたらでかでかと体育館とか書かれててさ。数分で来れるわけないじゃんここの学校かなり広いのに」

「ふむ。まぁそうだろうな。ならばもっと早く教室につくべきだったな。これからはもっと早く起きてみたらどうだ?」

「冗談。俺の待遇については知ってるだろ?」

「む、ぅ……。それは尋人が本気を出していないからであって、尋人だったら私なんていとも容易く倒せるだろう? ランクB、Aくらいはいけるんじゃないのか?」

「それは昔の話だっての」

「いや今だって、私は尋人の方が強いと思ってる。そのため今もこの身は優勝する事よりも尋人や舞ばかりを追っている。なぁ尋人。剣道へ戻っては「断る」…………そう、か」


 話が途切れ、少し気まずくなる二人。剣道で戻ってきてくれ。それだけだったら別にいつも言われている事だし軽く流していたかもしれない。ただ、今回ばかりは少し違った。つい口調が強くなってしまったかもしれない。


「ごめんな蓬花。俺は今でも、あの時の自分が許せないんだ」

「い、いや。私こそ無神経に口に出していい事ではなかったな……すまない」


 何度目になるかわからない同じ話を校長が話し終えたところで、慌てた様子で先生が校長に駆け寄って耳打ちしていた。


「おぉ、そうじゃったそうじゃった。今日この緊急朝礼をした理由はじゃな、最近この街で不審者が出ているらしい。今朝新聞を読んだ者は分かると思うが、死者も出ておるのじゃ。帰りはくれぐれも気をつけて帰る様に」

「起立。礼。これにて緊急朝礼を終了いたします。三年生から教室にお戻りください」


 校長のありがたいお話がようやく終わったと言う所で俺だけでなく、他のクラスメイトまで肩を回したり友達を駄弁ったりしながら自分たちの順番が来るまで待つ事になった。どうせ俺たちは一年生なのだ。一番最後なんだから最後までまたなければいけない。


「なぁ尋人。校長の話のあれって今朝のニュースの話かね?」

「どうだろ。今朝のニュースはビルの話じゃなかったか?」

「そうか? じゃあ新聞だけかぁ。見ないからなぁ。まいっか。俺達はどうせ落ちこぼれだし、被害さえなければ気楽に生きていられるだけでも幸せかぁ。ハハハ」

「それもそうだな。平和が一番だよな」


 二人で笑っていると、とうとう一年生が呼ばれて教室へと戻る事になった。


「尋人」

「ん?」


 教室に戻ろう。そう立ち上がったところで再び蓬花が話しかけてきたので一度立ち止まった。


「私は尋人が戻って来てくれると信じているからな。私にとってのあの頃のお前は、目指すべき高壁なのだから。ではまたな」


 ポニーテールを揺らしながら去っていく蓬花に「はぁ」と大きなため息をつく。


「まだまだもってもてじゃん尋人」

「ちげぇよ。あいつは妄信してんだよ……昔の俺に」


 この学校に入ってから一ヶ月、現在は五月の夏。まだまだ寒いけれど、除所に暖かくなってくる時期でもある。

 その後は特に大したこともなく、平和に昼飯を食べて下校する。金曜日である今日は午後は特別授業があり、それらはすべてランク変動の為の授業だ。

 それぞれのランクに応じて校門近く、体育館前、東校舎一階と西校舎一階の下駄箱前等に張り出されており、近くにいる先生にどの依頼を受けるか言って五時間目のチャイムと同時に依頼が開始される。

 クリアすればするほどランクは上がっていき、それに伴って依頼書の難易度も上がっていく。普通の依頼書で上がれるランクは大体C止まりだ。それ以上はピースが強くないと任務中に死ぬことが多いのだ。

 尚、ランクSの人はこの学校に数人おり、その人達は自由参加であり、緊急任務も受けるために授業も免除されている事がある。

 免除されている事に対してうらやましいと思わなくもないが、それだけ難しい任務をこの学校の理事長直々に勅命することもあって、多大な箔が付いているのだ。それによって進路の選択幅も変わってくる。


 まぁそんな高ランクな方々のご都合主義なんてのはまぁどうでもいいとして、帰り道俺らがいつものコンビニに来た時だ。


「…………」

「ん? どうした? 中はいらないのか?」


 中には入りたい。うん、中に入って唐揚げでも買ってゲーセンでも行こうかと話していたんだ。


「何やってるの君」

「?」


 コンビニの屋根の上で足をぶらぶらとさせながらボーとしてる少女に対してそういった。

 少女もこちらを見て自分が言われている事に気が付いたのか身軽な体を生かして俺の前へと降りてきてぺこりと頭を下げた。


「Good afternoon……a-……」

「え、えっと、こんにちわ? でいいのかな?」


 そういうと、少女は何かに気が付いたようにトントンと唇付近を人差し指でたたくともう一度口を開いた。


「こんにちわ」

「よかった……日本語話せたんだな。俺英語壊滅的だから話せないかと思ったよ」

「日本語、話せる。他にもフランス語、ドイツ語、中国語……」

「け、結構話せるんだな。将来の夢は通訳でもするのかな?」

「?」


 通訳の仕事をするわけではないのか。では育った環境で自然と身についた物だったのだろうか。否、中学生ぐらいに見える彼女なのだから教育か何かしないとたぶん無理だったとは思う。

 そう考えていると突然胸倉を強くつかまれて上ってくるように顔を上げてきた尚樹がいた。


「ひ、尋人ぉぉぉぉおおおおおおおお!!」

「おわぁ!?」

「お前これはどういうことだよぉ!! 俺という親友がありながら、俺が知らないところで黒髪ロングのゴールドアイの美少女と知り合ってるとはどういう了見だよ畜生めぇぇええええ!! まだまだ成長しきれていない身長とその控えめなバスト! ホットパンツと黒の二ーソックスの間に見える絶対領域! むしゃぶりつきたくなるだろうがぁぁああ!!」

「いやこれは昨日たまたまここで出会っただけというっていうか後半お前のただの感想だろ! 相手はまだ子供だぞ!!」

「知るかバカ! 明日クラスでお前が誰にも秘密で幼女とにゃんにゃんしてたって言いふらしてやるぅぅぅうううううう!!」

「な!? ちょ、待て尚樹!? それだけはやめろぉお!!」


 尚、明日は土曜日で特別授業だけが受けられる日なのでクラスに集まるような事はほぼないはずである。

 勝手に暴走してどこかへ消え去ってしまった尚樹を追いかけようと走り出したところをちょんと服を引っ張られる感覚がして止まる。振り向けば先ほどと変わらない少女がジーと見つめていた。

 力のない瞳やあまり表情の変わらないことを除けば確かに美少女と言えるだろう。昨日はそこまでしっかりと見なかったが、控えめにだが女性を強調する胸を包み込むノースリーブの白シャツにホットパンツ、黒いニーソックスを入っており、その上に先が穴が開いていたりでボロボロではあるがフード付きのコートを着ているようだ。隙間から除く素肌は傷を知らない柔らかな薄い桜色といってもいいだろう。

 あえて惜しい所といえばホットパンツじゃなくてミニスカートだったらよかったのに。


(って何を俺はこんなじろじろ見ているんだ!)

「ヒロト?」

「ん?」


 そう口にしたのは少女からだった。そういえば、自己紹介なんてのもしてなかったな。


「あぁ、俺は矢吹尋人っていうんだ。えっと、英語圏内の人だったら尋人=矢吹って言った方がいいのかな?」


 そういうと、彼女は首を振る。


「わかるから大丈夫。私は……night cat。そう呼ばれてる」

「え、呼ばれてるって、名前ないのか?」


 コクンとうなずき静まり返る空間。

 話が続かん! 尚樹だったらあれやこれやといくらでも続くと思うんだが、あいにく俺はそこまで話し上手じゃないし。


「あ、そうだ。とりあえず唐揚げ食うか? 今から買ってこようかと思うん「欲しい」あ、はい」


 今明らかに目が光った気がしたが気のせいではなく尻尾がふりふりと振られている幻覚まで見えてしまうほどだ。

 あぁ、やはりこの子もこの唐揚げの魅力には勝てなかったか。


「じゃあちょっと待ってろよ。買いに行ってくるから」


 うなずく少女を後にしてコンビニへと入っていく。

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