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歴史とDNA

ネットに溢れる稲作のデマについて

作者: とびうお君

 ネットの情報があまりにいい加減でしかもそれを無批判にコピーしまくるので、何か定説の様なものが出来てるけど、それに対して不快感を持ってるので一筆書きたい。まず一番の問題は佐藤洋一郎。この人になる。この人が問題ではない、特定の集団に利用されてしまってる。嫌韓集団である。次に中国嫌いにも関わってる。こちらはハプログループ関係、漢民族に滅ぼされて日本に移住した弥生人ってシナリオを描きすぎ。


 日本から朝鮮へって米の伝播の話が安易にされすぎてる。これ根底にある物が駄目なので整理できない。まずそれを捨てて考えて欲しい。その根底は嫌韓と右ががった思想。私は真実が知りたい、ただそれだけだ、どっちがどっちなんてどうでも良い。無批判に受け入れてはいけない。


 では佐藤氏のどこに問題があるか?でまず佐藤氏が言った事を都合よく省いてる発言がある。佐藤氏は朝鮮から日本稲が伝わった可能性もあると書いてる。日本には大雑把に2種類のタイプの米があるのだが、そのうち片方が韓国に無いとなる。そうなるとそれはどこから来たか?になる。現地の江南から直接伝わったとなる。問題はもう1つになる。これは韓国と日本が中国と違い極端に多いのでどっちとは決定できない。ちなみに佐藤氏は考古学的見地からこっちは朝鮮経由で日本に来たといってしまっている。考古学的な稲作の遺跡が高度なものは韓国の方が起源が古いから(素人目には微妙な差だが)、佐藤氏は稲そのもののの起源の一部の話をしてるに過ぎない。


 本当に悪質だが、ネットの大半の日本から半島に伝わったってのはこれが根拠になってる。根拠にならない。本当に重要なのは、中国の研究者の話しになる。半島の大半の米は満州から流れてきた米に日本の縄文時代の米が混じったとなっている。こちらと重ねて述べるべきである。


 さて、それは置いておいて、佐藤氏をあまり信じてはいけないって点を語る。その点は別に怪しい人じゃない。ちょっと大胆な説を述べる傾向が強いって点になる。佐藤氏はジャポニカの起源について2転3転してる。これはその後の考古学発見でがらりと変わるのでそれで変えてしまっているのが大きい。


 それだけだとなんら問題が無い。ただ佐藤氏には独特の癖がある。日本の研究者は文系の人の説に毒されてる人が多々居る。これが癖と成って出る。柳田國男の唱える海上ルートに強く影響を受けていて、実際それで証明してしまったのだけど、そのせいでリップサービス的に著書などは言い過ぎる所がある。いろんな話を読めば分かるが、佐藤氏はその辺り曖昧な部分がある。過去は熱帯ジャポニカについて、東南アジア起源を想定していたが最近は長江の遺跡が思いのほか古いのを受けて、稲の起源を長江に搾ってしまっている。


 佐藤氏がこうなったのは理由があって、稲の遺伝的多様性は東南アジアの方が多い。起源は人間もそうだがけど遺伝的多様性が多いほどそのが起源であると言うのがパターンになってる。佐藤氏が何故東南アジア説を覆したか?と言うと、まず長江での稲作があまりに古すぎた事。次に、東南アジアの稲作は陸稲も含めてほとんど長江ほど古い遺跡が無いから。これは癖というより総合的判断だと思う。佐藤氏は考古学的見地を軽視しない。そしてネットの大半の人間はこれを軽視する。または自分の思想に都合が良い見地だけ従う。だから微妙に佐藤氏の意見を変えてしまうことに繋がってくる。


 さて問題は佐藤氏が決定した遺跡の米だが、これ問題がある。野生種の中に熱帯ジャポニカがまざっていたため栽培種が出来た瞬間ではないのか?と想定したようだ。以前から温帯ジャポニカは長江起源で間違いないとしてて、熱帯は東南アジア由来にして保留していた問題。それをこれで決定した。


 だが、東南アジアの遺伝的多様性が多い問題を無視すればになる。それほど決定打なのか?は私は疑わしいと見ている。佐藤氏は遺伝系のプロだがあまりに考古学的見地を重視しすぎる。一見他学問を軽視しなくて謙虚に見えるが、肝心の遺伝的学のセオリーからしたときの矛盾を放置してしまっている。これが佐藤氏の癖になる。逆に言えば、そこに矛盾があるとかじゃない。佐藤氏がどれだけ考古学的見地を重視してるか?って事になる。ネットは見事にこれを無視してるのが問題になってるから。遺伝だけですべて語るのは危険だと佐藤氏は教えてくれてるのである。それを見事にネット民は無視してる。


 稲の起源を今回書きたいわけじゃない。ネット民のいい加減さを稲の起源を例に書いてるのが今回の主題になる。


 これは余談だけど、今回この話を書こうと思った動機は稲の野生化についてで、中国の野生稲は栽培種の野生化じゃないか?って指摘を見たからになる。専門家がそんなミスをするわけ無いじゃないか?だが、一体どうやって判断してるのか?きちんと見てるか?となる。この点ネット民は鵜呑みにしすぎる。


 問題は鵜呑みにする事じゃない。専門家のいう事を捻じ曲げて利用する点や、ただ一人の専門家の論をコピーしまくって常識化してしまう強引さについてである。ネットでこれについて調べれば見事に佐藤洋一郎氏のソースをコピーした論ばかりになる。そして何故捻じ曲げが発生するのか?は右がかった思想が原因になる。大半これについて扱ってる人を見るとそういう思想が見え隠れする。決まって韓国の悪口と、漢民族の凶暴性について書かれている。


 案の定丁寧に調べてみると、判断の元になった情報から、難しい判断をしてるのを今はこれが新しい常識としてばら撒いている。


 佐藤氏は一部の日本から半島への稲の伝播について触れただけで、半島からの水田稲作の伝播を否定したわけじゃない。何故日本から半島に伝わったと言えないかと言うと考古学的に確信できる発掘が無いから。


 ちなみに日本の方が稲作の歴史は古い。ただ弥生時代の進んだ稲作とは違う。そういった韓国側でた遺跡より日本が進んでいたと言う遺跡は出てない。焼畑栽培、湿地帯での栽培、未熟な水田など、ごちゃごちゃになってて情報が錯綜しててまともに分かるのは、本格的な水田については日本の方が後れていたって発掘しか出ていない。もちろん未知ものが発見されたら変わるのだろうが、現時点では、日本から半島へ稲作が伝播したと言うのは、稲の伝播と混同した右がたかった思想の人達の日本万歳の宣伝しかない。



 最後に長江起源に決定できない重要な2つの話を書いておこうと思う。1つは佐藤氏が有名な著作を出した後に出された論文で、DNA調査から再び東南アジア起源説が出てきたことによる。野生種から栽培種にいたるには3つの重要な変異があり、東南アジアのものはその変異が1つしかおきてないものが存在する。より野生種に近い稲は東南アジアにあるらしい。それが野生種なのか栽培種なのか?までは読み取れなかった。


 もう1つは、日本の熱帯ジャポニカと良く似たものがフィリピンなどの南西諸島に多かった事があげられる。


 過去佐藤氏はさらなる長江での研究調査が行われる前には、南西諸島起源説も考慮に入れて、沖縄ルートを考えていた。長江の起源がどんどん遡る事と様々な理由から結局長江直接ルートと長江起源に変わってしまった。


 その根底には考古学的な発見の重視がある。そういった難しい判断が伴うものを、それらを無視して思想的な偏りによって強引に決めてしまってはならない。


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