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1話「いなくなったはずの親父がクイズ王になってるんですけど」

5回裏2アウト。ビハインドは14点。

カキーンと力ない打球が打ちあがる。


スタンドから溢れた溜息を、お立ち台の上にいる俺は一気に浴びた。

まあ無理もない。1回戦から甲子園常連の高校とあたるし、エースは直前で体調崩すし。

こちらに勝てる見込みは一切なかった。


ふとお立ち台から視線を落とすと、柏春樹がすでに大粒の涙を流しながら号泣していた。

こいつに誘われて応援部に入ったはいいものの、部員は俺とこいつの2人だけ。

チアガールなどという応援の象徴はうちにはいない。

「チアガールの一人でもいたらやる気出るのになあ」と野球部には散々愚痴をこぼされるし、

毎回応援にくる生徒はせいぜい50人くらい。下手に目立つだけでいいことなんてひとつもない。

「昔はうちも強豪だったから、もしかしたら甲子園いけるかもよ!アルプスのお立ち台たってみたくないか!?」

という柏の誘い文句も今となっては空しいだけだ。


「なあ浦安、あいつらよく頑張ったよなあ」

嗚咽交じりで柏が俺に声をかける。

「そうだな、強豪相手によくやったよ」

スタンドに向かって一列で並ぶ野球部員を俺たちは相応の拍手で迎えた。

(明日からなにしようかなあ…)

そんなことを考えるくらい、何の感慨にも浸ることなく最後の夏が終わった。




学校に戻って野球部の引退セレモニーを見届けた頃には日が暮れかけていた。

俺と柏は校門の前でアイスを食べながら駄弁っていた。


「今回はくじ運も悪かったし、もうちょっといいとこまでいけたと思うんだよなあ」

球場にいたころの柏とは打って変わってケロッとしている。


「何回その話するんだよ。負けちゃったものは仕方ないだろ」

「だって!ここ10年の千葉海浜高校でも最強って言われたメンバーだぜ」

「うちの高校が最強なら相手はいったいなんでしょうかね?」

「あーやめろ!やめろ!お前めちゃくちゃ冷めてんな!今日で俺らも引退だぞ!」

「そうだな、明日から何しようかな~」

「そういうことじゃねえよ!…まあ海にはいきたいよな」

「お、いいね。夏だしな」

「泳いで、いか焼き食って…って、くそ!もう海に行きたくなってる!」

「これでいいんだよ、もう終わったんだし。そろそろ帰ろうぜ」

「…そうだな。また連絡するわじゃあな」

「おう、じゃあな」

俺たちはそれぞれ家の方向に向かって自転車をこぎ始めた。



自転車で河川敷を走りながらぼんやりと今日のことを振り返っていた。

別に薄情なわけでもない。終わってしまったなあ、という感覚はもちろんある。

ただ悲しくない。それだけだ。


俺には両親がいない。

父親は気が付いたらいなくなってたし、幼稚園にあがるまで母親という存在を知らなかった。

毎日送り迎えをしてくれる祖母にむかって

「なんで他の子のおばあちゃんはあんなにきれいなの?」

と子ども特有の純粋さ丸出しで聞いてしまい、困らせたこともあったらしい。


両親がいないことで周りから冷やかされるうちに

段々とそれに対する対応が面倒になってしまった。

そうして今ではこんなひねくれた高校生になってしまったのだろう。


「あーあ、もっと感情が豊かな人間になりたいなあ~」

冗談半分で口にした。完全に上の空だった。


あ、目の前からリードのついた犬が走ってきた。その後ろから飼い主が追いかけている。

気づいた時には避けられないところまできていた。

ぶつかる!と思ったその時、バランスを崩して自転車ごと土手を転がり落ちる俺。

(あー・・・こりゃ海いけないかもなあ)

だんだんと意識が遠のいていく。




---



ふと目が覚めると河川敷ではなく、クイズ番組のセットのような場所にいた。

俺が立ち上がると、観覧のお客さんが一斉に拍手をする。

「なんだこれ・・・どういうことだ・・・?」


拍手が鳴りやまない中、セット奥の階段から男が登場した。

「それでは今日の挑戦者をご紹介します!千葉海浜高校3年生、浦安千明くんです!」

シルクハットにタキシード、でかい蝶ネクタイ。コテコテの司会者衣装に身を包んだ男。

…あれ? 直感で思ったことを口にしてみた。

「親父…?」

「はい!正解!それでは行ってみましょう!クイズドリームタイム!」


状況が呑み込めないうちに俺はクイズの挑戦者になっていた。



なんとなく頭の中にあったアイデアを文字に起こしてみようかなということで

書きはじめました。まだまだ拙いですが、よろしくお願いします。

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