バラード
それは、自分の気持ちを分かってもらえないことの恨み節ではなく、分からないということを分かりたいという素直な気持ちを表現したいというユウカの願いが完全に叶えられた詞だった。それにさっそく、レルゼーが曲をつけた。バラードだった。
その場にいたガゼも、メジェレナも、そしてユウカも、ボロボロと涙をこぼしていた。
「いい!、すごくいいよ!!」
ガゼが涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔のまま、ユウカに縋りついて言った。メジェレナもうんうんと何度も頷いていた。レルゼーは相変わらずの無表情だったが、彼女なりにその詞を認めているのは何となく分かった。でなければこんなすぐに曲も出てこないだろう。
そんな感じでユウカとしては大満足という出来だったが、果たしてそれがポルネリッカに通じたのかどうか…。
まあ、結論から言えば、『通じなかった』と言っていいだろう。その後もポルネリッカの様子には何も変化はなかったのだから。だが、他人と無用な諍いを起こすヘルミに比べれば、元々変に気を回す必要もなかったのかもしれない。はっきり言えば徒労に終わったということなのだが、今回のことはユウカにとっても大きな経験になったから、無駄にはならないはずだ。
また、レルゼーの伝手を通じて、ヘルミがヴォーカルを務めているバンドに楽曲を提供することも決まった。だが、レルゼーが曲を作ったと聞けばヘルミが再び感情的になってしまう可能性もあったため、曲については改めて作り直してもらうことになった。しかし、レルゼーの作った曲が良すぎたために、ほとんどアレンジを加えた上でブラッシュアップした程度の違いしかなかったのだが。
改めてポルネリッカにも、詞を楽曲として使用することの許可をもらい、正式にヘルミが所属するロックバンド<ガウ=エイ=アヴェンジャー>に提供することとなった。
その後、爆発的なヒットを飛ばすというほどではなかったが、ガウ=エイ=アヴェンジャーが出演するライブ会場では、定番の一曲として、ユウカがプロットを考え、ポルネリッカが詞として書き上げたそのバラードを歌うヘルミの姿が見られるようになっていった。ヘルミ自身も、それを歌う時には、何かを噛み締めるようにして、誰かに語り掛けるようにして、微かに目を潤ませているようにも見えた。
それが功を奏したのかどうかは、ヘルミ自身が決して何も語らなかったために分からない。しかし、これに前後して彼女が他人と喧嘩をしてボロボロになって部屋に帰るという姿が見られなくなったというのも事実なのだった。




