ポルネリッカの正体
自分の外見上の年齢も任意で決められるにも拘わらずユウカがそのままなのは、自分が大人になるということが具体的に想像できないためである。
故に、ガゼやアーシェスを身近で見ていてあまり大人になる必要性も感じられないことも相まってそのままなのだった。
まあそれはさて置き、アパートでのユウカの生活ぶりも相変わらずである。住人達との関係も、一部を除けば家族のように良好だった。その一部というのが、当然の如くヘルミと五号室のポルネリッカ・パピリカである。しかし、この二人については他の住人も同じようなものなので、それで言えばユウカも十分に上手くやっている。
また、ヘルミに対しては見掛ける度に挨拶を交わすユウカだったが、ポルネリッカはほぼ姿を見せることすらないので挨拶すら掛けようがなかった。買い物は宅配で済ませ、人がいる時はトイレにさえ出てこない。小用についてはシャワー室で済ましているらしいとさえ、二号室のマニが言っていた。本当かどうかは分からないが、有り得ないこともない気はしてしまう。少なくともペットボトルとかにするよりはずっとマシだろうし。
と言うか、いまだに顔すらちゃんと見てないのだ。が、それも他の住人も同じだった。誰もポルネリッカの顔を知らない。ユウカが見た時には真っ暗な闇の塊のようなものの中に黄色い光が二つ浮いているだけだったのだが、他の住人の証言もほぼ同じだった。唯一、機械生命体である四号室のシェルミだけは、有機生命体とは違う形で見ることが出来る為に、違う印象も持っているようだったが。それによると、
「あの方は実体がありません。ですから姿形というものがそもそもないんです」
と言っていた。シェルミの性格からして嘘を言ってるとは思えなかったが、それが果たして本当なのかすら確かめようがなかった。それに対しては、アーシェスが答えてくれた。
「彼女は、自分の姿形というものに対してとても強いコンプレックスを抱いていたみたいなの。それが高じて姿を維持できなくなった。そういう人も、数は少ないけど他にもいるんだよ」
そう、任意で自分の外見上の年齢を選択できるということは、逆に自分の姿を選択しないということもできてしまうということなのだ。
もちろん、普通の人間は無意識のうちにでも自分の姿というものを認識してるので、無意識のレベルで姿を選択しないということができる人間は滅多にいない。しかしポルネリッカはそれができてしまった。だから彼女は、『姿がない』のである。となると、実はトイレにも見えない状態で行っている可能性もあるということではあった。




