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ユウカがヘルミのためにできること

ユウカがヘルミのためにできることなどは、恐らくない。生まれた時から殺し合うことを定められ、しかしそれでもと信じた相手に裏切られて殺された者の気持ちが、現代の日本で育ったユウカには想像すらままならない。だから何かをしてあげたいと思うことがまず思い上がりなのだ。


しかしそれでもと思ってしまうのもまた人間である。ヘルミが、自分の生まれ育った環境を承知しつつも『それでも』と信じてしまったように。


この日からユウカは、ヘルミを見かける度に『おはようございます』『こんにちは』『こんばんは』と声を掛けるようになった。他に何をすればいいのか分からなくて、とにかく挨拶をした。


無論、あのヘルミがそんなことを受け入れる訳もない。ユウカがいくら愛想良く声を掛けても一切、視線を向けることさえなかった。だがユウカは諦めなかった。そしていつしか、十年が過ぎていたのだった。


地球の一年とは誤差があるので厳密には正しくないかも知れないが、ユウカは二十五歳になっていた。ただし、見た目は相変わらず十四歳の頃のままである。


実は外見上の年齢は、本人が望むなら任意の姿に変えることは可能だった。実際、幼い頃にここに来た人間の多くはきちんと外見上も大人になっていたりする。逆に、老いてからここに来た者の多くは自分にとって最も理想的だった頃の姿に戻っていたりもする。


が、それはあくまで本人が本心からそれを願っていた場合であり、たとえ無意識であっても変わることを望んでいなければ変われなかった。アーシェスやガゼがその例だった。大人になることに少なくない憧れを抱きつつ、しかし心のどこかでは自分が変わってしまうことを恐れてもいた。ガゼの場合は特に、自分が大人になってしまったら両親が自分を見ても分からなくなってしまうかも知れないという不安が、成長することを拒ませていた。アーシェスの場合は、子供の自分でさえ奴隷としてあのような扱いを受けたのだから、大人になってしまったらそれこそどんな扱いを受けるのか考えただけでも恐ろしいという恐怖も原因の一つではあった。


もっとも、さすがにそれも百万歳を過ぎたあたりの頃には解消されており、今では単に夫と出会った時の姿のままでいたいという願望がそうさせているだけだが。


そういう諸々も、ある意味ではここで暮らす醍醐味とも言える。変わりたいと思う気持ち、変わりたくないと思う気持ち、そのどちらもここでは許される。ヘルミが過去を割り切れずに今のままでいたいと言うのなら、それも許されるのだ。ユウカもその辺りはもう分かってはいたのだった。


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