マフーシャラニー・ア・キリオーノヴァとヌラッカ、ただいま同棲中。ただしどちらも女性
ポルネリッカにもらったEIpodはとりあえず制服のポケットに入れて、今度は一階に降りてきた。そして一号室のドアをアーシェスがノックする。
「キリオ、ヌラッカ、いる?。アーシェスよ」
ポルネリッカのこともあり、石脇佑香は緊張していた。その前で、かちゃりとドアが静かに開く。
「あら、アーシェス。なんか用?」
「アーシェス、久しぶり…」
今度は二人出て来た。一人はちょっと鱗っぽい質感の青い肌をした赤い瞳のすらりとした長身の女性?だった。タンクトップにショートパンツといういでたちで、胸のふくらみを見て女性かなと思ったのだが、頭には髪がなく、大きな鱗のようなもので覆われていた。
もう一人は、見るからにおっとりとした印象のある表情をした、緑がかった透き通るような肌が…、いや、『透き通るような』どころか完全に透き通っていた。反対側が見えている。しかも服を着ていない。これには石脇佑香も驚いて、目を覆ってしまった。
「もう、ヌラッカ。人前に出る時は服くらい着なさいって言ってるでしょ」
アーシェスが困ったような顔をしつつそう言うと、ヌラッカと呼ばれた透明の女性は、殆ど表情を変えずに、
「服、キライ…」
とだけ呟くように応えた。
しょうがないなあという感じで苦笑いしたアーシェスは、気を取り直して石脇佑香を紹介した。
「この子、八号室に住むことになったイシワキユウカ、ユウカって呼んであげて」
紹介された以上は挨拶をしなければと、視線は向けられない状態ながら「よろしくお願いします」と頭を下げた。見た目はちょっとあれでも、メジェレナのことがあったから、言葉などから受ける印象としては優しそうな人だと感じて少しホッとした。ただ、恰好が…。
しかし問題は、ヌラッカの格好だけではなかった。
「よろしく。君、可愛いね。歳はいくつ?、付き合ってる人いる?」
透明な彼女がヌラッカなら、こちらはキリオと呼ばれた方なのだろう。鱗っぽい青い肌をした長身の彼女は、石脇佑香の顔を覗き込むように顔を寄せてきた。それを見たヌラッカが、
「キリオ、浮気、ダメ!」
と、表情はほとんど変わらないにも拘らず怒ったような声を出した。
「そこまでそこまで。ユウカがどういうコか分からないうちからそれは無しだよ」
アーシェスが割って入るように立ちはだかり、釘をさす。するとキリオは「ちぇっ」といった感じで引き下がった。苦笑いしながら石脇佑香に向き直ったアーシェスが言った。
「青い方の彼女がマフーシャラニー・ア・キリオーノヴァ。モデルさん。で、透明な彼女はヌラッカ。不定形生命体だけど歯科技師で、二人は同棲中なの」