アーシェスとレルゼー
ユウカ、ガゼ、メジェレナ、レルゼーの四人が談笑していると、またドアがノックされた。そのノックの仕方で誰か分かったユウカが、「どうぞ~」と声を掛ける。
「久しぶり。元気してた?。近くに寄ったからちょっと顔見に来たの。これ、差し入れ」
そう言いながら部屋に入ってきたのは、アーシェスだった。相変わらず穏やかで包み込むような笑顔が心地好かった。
「そうか、レルゼーとも仲良くなれたんだね」
ユウカの部屋にレルゼーがいるのを見ても、アーシェスは全く動じなかった。それどころか嬉しそうに微笑みながら喜んでくれた。
とは言え、実のところレルゼーの方がアーシェスよりもはるかに年上である。むしろ年上という表現すらもピンとこないほどに次元の違う存在だ。なにしろ数百億年を生きてきた邪神である。それに比べればたかだか二百万年など一瞬に過ぎない。しかしそういう差は、ここではそれほど大きな意味を持たないのだ。良くも悪くも<対等>なのだった。
アーシェスの差し入れは、近所の菓子店の人気商品、塩大福だった。「お~っ!」とユウカ、ガゼ、メジェレナが声を上げる。彼女達にとっても嬉しい差し入れだった。さっそく熱いお茶も用意して、皆で食べた。
すると、ユウカと知り合うことになった経緯を簡単に説明してもらったアーシェスが、レルゼーに向かって言った。
「そうか…、ヘルミと会ったんだね。彼女、まだ吹っ切れてないんだ…。
ごめんね。あなたのところにヘルミを紹介したのは私なのに、気を遣わせちゃって」
その言葉に、レルゼーは静かに言葉を返した。
「アーシェスは悪くない…。ただの行き違いだから…。ヘルミが対邪神の魔法使いだったことを黙っていたのが間違い…。だけど、彼女がそのことを話したくないと思うのも当然のこと…。だから誰も悪くない。もし悪いのがいるとしたら、最初に正体を明かさなかった私が悪い…」
それはやはり感情のこもっていない平板で硬質なものだったが、それでもアーシェスを気遣う気持ちが感じ取れる言葉だった。邪神にも関わらず、レルゼーにはすごく気持ちの優しい部分があるのが見て取れた。それをもうちょっと表情に出せれば誤解もされないのかも知れないが、その辺りはあまり高望みしても仕方ないのかもしれない。
そんな感じでちょっとしんみりしてしまったのを察したアーシェスが、
「ごめんごめん。変な話しちゃったね。私はまたこれから仕事だから、もう行くね」
と精一杯の笑顔を振りまきながら部屋を出て行った。彼女が言った<仕事>というのは、実はレルゼーの話を受けてヘルミを探しに行ったことなのだが、ここではそれについては詳しくは触れない。いずれ機会があればということになるだろうから。




