ミーハーなファン
レルゼーの話が一段落付いた時、不意にドアがノックされた。
「どうぞ~」
ノックの仕方で誰が来たのか分かったユウカがそう声を掛けると「おじゃまします」とメジェレナが入ってきた。だが、部屋の中を見た彼女は目を大きく見開いて、呆然とした顔になった。
「あ…、え…?。もしかして、レルゼーさん…?。<レルゼリーディヒア>のリーダーの…。え?、本物…?」
もはや自分でも何を言ってるのか分かってなさそうな、ほぼ独り言に近いその言葉に、ユウカが反応する。
「うん、ロックバンドのリーダーやってるレルゼーさん。今日、知り合ったばかりなんだ」
その言葉に後押しされるように部屋に入り、メジェレナはレルゼーの前に膝をついて興奮したように語り出した。
「あ、あの、私、ファンなんです!。レルゼリーディヒアの…!。アルバムも十年前から揃えてます…!、あ、握手してもらっていいですか…!?」
普段は内向的で引っ込み思案なメジェレナのその姿に、ユウカもガゼも呆気に取られていた。しかも、ロックが好きだとはこれまで聞いていなかった。確かに見た目のイメージには合っているが。
と言っても、実はメジェレナのそれは、比較的ミーハーと言った感じに近いものかも知れない。ロックも好きだが基本的にはポップスが好きで、レルゼリーディヒアについてもどちらかと言えばビジュアルに惹かれてファンになったと言った方がいいだろう。だが、理由はともあれ好きなバンドであることは間違いない。そのリーダーがいきなり自分の目の前にいたらこの反応も仕方のないものかも知れなかった。
レルゼーに握手してもらい、しかもTシャツにサインまでしてもらったメジェレナは、すっかり有頂天になっていた。それは、彼女がここに来て一番の幸せそうな様子と言っても良かっただろう。
ユウカもそんなメジェレナの姿を見て、レルゼーを部屋に招いて良かったと思った。最初はいろいろ不安だったけれども、やっぱりここでは邪神でさえこうやって人気者になれたりするんだというのが実感できた。
見た目も個性も全くバラバラな四人だったが、一緒の時間は楽しかった。アニメを見るのも忘れて、時間も忘れて、あれこれおしゃべりが楽しめた。レルゼーもメジェレナも、自分が得意なジャンルでならそれなりに話すことができた。
ここにいれば、これからもこういう時間は何度も訪れるだろう。時間そのものがたっぷりとあり、ただ毎日がのんびりと過ぎて行くここでは、こういう出会いこそが最大の娯楽と言えた。人間関係の基本がここにあるのだと、思わされたりもするのだった。




