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コミュ障の邪神

「…あ、ヌラッカ…」


不意にカハ=レルゼルブゥアがキリオの背後に視線を向けて声を発した。するとキリオは流れるようにその方向に向き直り、


「いやだなあ、ヌラッカ。僕は君一筋だよ。これはただの挨拶さ」


と全く悪びれることもなく躊躇いもなく、スラスラとそう語り掛けた。が、そこには誰もいなかった。そう、カハ=レルゼルブゥアが引っかけたのである。そしてキリオの注意が逸れた瞬間に認識阻害を自分とユウカとガゼに掛け、キリオの視界から消えてその間にユウカの部屋へと戻ったのだった。


「相変わらずだね、あの人も…」


ユウカの部屋でようやく一息つくと、ガゼが疲れたような顔をしてそう呟いた。それに対してユウカは苦笑いするしかできなかった。しかしそれから気を取り直してカハ=レルゼルブゥアに向き直って話し掛ける。


「え、と、カハ…、カハレ…」


名前が出てこなくて口ごもるユウカに、カハ=レルゼルブゥアは静かに応えた。


「カハ=レルゼルブゥア…。レルゼーでいいよ。この姿の時はそう名乗ってる…」


レルゼーとは、今はもう消滅してしまった遥か昔の宇宙に栄えた文明の言葉で、直訳すれば<炎>という意味になる。炎熱を司る彼女には相応しいと言えるだろう。それを受けてユウカは少しホッとした顔をした。


「じゃあ、レルゼーさん。キリオさんとお知り合いだったんですか?」


あくまで会話の入り口だったとはいえ、少々ありきたりな質問だったかもしれない。レルゼーもキリオも、それぞれのジャンルでは人気者であり、テレビでの露出もある者同士だ。お互いを知っていてもそれほど珍しくはないだろう。しかしレルゼーはそんな質問にも丁寧に答えた。


「以前、テレビの番組で一緒になってそれから時々飲みに行ったりする…。友達…かも知れない…」


『友達かも知れない』とはまた曖昧ではあるが、それだけレルゼーは他人とのコミュニケーションが苦手ということなのだろう。そんな姿を見てるうちに、ユウカはなんだか親近感を覚えてきてしまった。「そうなんですね」と応えつつ、


『コミュ障の邪神って…。なんか、かわいいかも』


そんな考えが頭をよぎって、思わず口元が緩んでしまった。その顔がまた可愛らしくて、ガゼが頬を染める。すると、レルゼーもどこか所在無げに視線を泳がせたのだった。


『照れてる…?』


『もしかして照れてる?』


それまで全く表情らしいものを見せなかったレルゼーのそんな様子に、ユウカもガゼも呆気に取られていた。だがそればかり気にしてもいられない。もっと気になることがあるのだ。


「あ、そ、そうだ。あの、ヘルミさんのことなんですけど…、訊いちゃ、ダメですか…?」


少し上目遣いになりながらユウカはそう切り出したのだった。


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