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ポルネリッカ・パピリカ、バツイチ独身、作詞家

「ありがとうございました。あ、それと私のことは<ユウカ>でいいです」


「OK、ユウカ。これからよろしくね」


メジェレナに改めて冷蔵庫のお礼をして、アーシェスは今度は六号室のドアをノックした。が、返事がない。留守のようだった。なのでここはとりあえず後回しにして、五号室へ行く。


だが、ノックをする前にアーシェスが石脇佑香いしわきゆうかに向かって囁くように言った。


「五号室の住人はちょっと気難しい人だから、気を付けてね。一応、今回は挨拶はするけど普段はもうあまり関わらなくていいよ。向こうも関わって欲しくないって思ってるから。そっとしておいてあげてね」


と言われて、急に緊張してくるのを感じた。さっきのメジェレナが、見た目に似合わず温和な人だっただけに、どんな人が出てくるのかと身構えてしまう。


「ポルネリッカ、いる?。アーシェスよ」


…返事がない。ここも留守なのかなと石脇佑香が胸を撫で下ろしかけた時、かちゃりと静かにドアが開いた。しかし開いたのはほんの数センチで、しかもそこから覗いたのは、形も何もはっきりしない真っ黒な<何か>だった。それでも何となく頭かなって思えるところに黄色い光が二つ、浮かんでいるように見えた。目ということなのだろうか。


「…なに…?。忙しいんだけど…」


もういかにも面倒臭い、関わらないでっていうオーラが濃密に放たれてるのを感じ、石脇佑香は更に委縮した。


「八号室に入る新しい子を紹介しに来たのよ。名前はイシワキユウカ。ユウカって呼んであげて」


アーシェスにそう紹介してもらって、石脇佑香は恐縮しながら頭を下げた。しかし、輪郭すら曖昧な真っ黒な何かが相手だと表情がさっぱり分からなかった。


「そう…、よろしくね。じゃあこれ、あげるから。私のことはそっとしておいて…」


そう言ってポルネリッカがドアの外に置いたのは、携帯音楽プレーヤーらしき機械だった。そしてそのままドアを閉めてしまったのだった。


それを拾い上げて石脇佑香に手渡しながらアーシェスが苦笑いをする。


「彼女はポルネリッカ・パピリカ。あれでも売れっ子の作詞家なの。創作活動に集中したいからってことで殆ど他人とは関わろうとしないわ。その所為で結婚に失敗したりしてたけど、悪いコじゃないのよ。あ、これ、ポルネリッカモデルのEIpodエイポッドだ。メーカーからの試供品だね」


メジェレナとは上手くやっていけそうな気がした分、石脇佑香はまた不安を感じずにはいられないのだった。


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