邪神と邪神、仲良くケンカしな
ユウカは、モニターに映っている巨大な影がさっきの二人の男であることに直感的に気付いていた。アニメでもこういうのを見たことがある。あれは、さっきの二人が変身?した姿なのだと。
しかし厳密にはそれは変身ではなかった。むしろ逆だ。変身を解き、本来の姿に戻ったのである。そこまで見て、ユウカはようやくクォ=ヨ=ムイに声を掛けることができた。
「あの…、何が起こってるんですか…?」
その問い掛けに、クォ=ヨ=ムイは艶っぽく微笑みながら、
「ケンカよ。超越者同士の、あなたたちに分かりやすく言ったら邪神同士のケンカ。二人はケンカする為にそれ用のステージに行ったのよ…」
『ケ、ケンカ…?。邪神同士の…!?』
その言葉にユウカの体は緊張し、心臓が激しく鼓動を刻み始めた。邪神同士のケンカなど、およそとんでもないことになるはずなのだから。が、それと同時に、かつてアーシェスが言っていたことが頭をよぎった。
『破壊のための力は再現されないの。ただの手品とかショーみたいになるのよ』
アーシェスは確かにそう言っていた。それに加えて、
『どんなに派手にやり合ったって、精々殴ったり蹴ったり程度の威力しか再現されないから、ただのレクリエーションみたいなものだけどね』
とも言っていたはず。それを思い出すと、少し動悸が収まってきた。あとはその言葉が事実であることを祈るしかない。が、モニターの中で繰り広げられる光景は、そんな彼女の祈るような気持ちをまるで無視するかのようなものだった。なにしろ、ヘルメットを被ったような頭をした巨人が大きく口を開くとそこから凄まじい光が迸り、その先にあった森も山も一瞬にして消し飛ばしてしまったのだから。
『ひ、ひいぃいいぃぃぃっっ!』
これのどこが、『精々殴ったり蹴ったり程度の威力』だというのか。この調子で暴れられては、世界などあっという間に滅んでしまうのではないのか。
しかし、その様子を見ている客たちはただ楽し気に、まるで格闘技の試合でも観戦しているかのように興奮しているだけだった。モニターの中では間違いなく恐ろしい破壊が行われているのに、誰も緊張感など持っていないし、しかも実際、ただ映画が上映されているかのように何か異変を感じるようなこともない。
しばらくその様子を見ているうちに、ようやくユウカにも分かってきた気がした。その光景は単なる<演出>なのではないのかと。ショーとして盛り上げるために派手にしてはいるが、これは現実に起こってることではないのかも知れないと。
そして、ユウカの推測は正しかったのであった。




