イッツァ、ショータイム
バーの店内で、いかにもごつい男二人が明らかに頭に血を上らせた状態で睨み合っているのに、他の客たちは緊張感を抱くどころか、
「お~、やれやれ~」
「このカードは久しぶりだな。こいつは楽しみだ」
といった感じで、まるでスポーツ観戦でもしてるかのような盛り上がりを見せていたのである。それとは正反対に怯えて呆然としてるユウカに向かい、クォ=ヨ=ムイがちょいちょいと手招きをした。縋り付くように傍に来た彼女に艶っぽく笑みを浮かべながらクォ=ヨ=ムイは言った。
「せっかくだから見ていきなよ…」
『せっかくだから』?、『見ていきなよ』?。意味が分からずおろおろとするユウカの視線の先で、睨み合っていた男二人の姿が突然消えたのだった。そう、突然だ。どこかに走り去ったとか飛び退いたとかではなく、スイッチを切ってテレビの画面が消えるかのように突然消えたのだ。
何が起こってるのか分からずにユウカが思考停止していると、一段高くなって舞台のようになった一角の壁が何の前触れもなく窓になった。いや、外の景色が映っているように見えたので窓だと思ったのだが、ここは地下でしかもその景色は明らかにこの辺りの光景ではなかった。だからテレビモニターだということを、結構な時間がかかってようやくユウカは気付いたのだった。
他の客は皆、そのテレビモニターを注視している。クォ=ヨ=ムイも同じようにそちらを見ていた。これから何かの放送が始まるのかとユウカは思った。すると、そこに映っていたどこかの湖の湖畔らしい景色の中で小さなものがものすごい速さで動き回っているのに気付いたのだった。だが早すぎて全く目で追い切れない。なのに、
「そこだ、いけ!」
「やれーっ!!」
と、他の客たちは声を上げていた。彼らにはそれが見えているらしい。
しかし、ある客が、
「チマチマやってないでもっと本気出せよ!」
と怒鳴った。思わずビクッと体をすくませたユウカだったが、視線だけはモニターを見ていた。その瞬間、まるで客の怒声が聞こえたかのように、突然、巨大な影がモニターに現れたのだった。
それは、画面で見る限りでも恐らく数十メートルはありそうな巨人だった。その姿をみて、ユウカは「あっ」と声を上げた。その巨人の頭はまるでヘルメットのような形をしていて、その下からドレッドヘアのような髪、いや、触手が無数に垂れ下がっていたのである。しかもその巨人の前には、アルマジロのような質感の鎧っぽい体の、黒っぽい獣のようなものもいたのであった。




